やがて七瀬が出かけると
玲奈は下の階に住む高橋の部屋を訪れた。
玲奈がドアをノックすると
高橋は笑顔で招き入れる
「来ると思ったよ、さあ、どうぞ!」
高橋は変装はしておらず
素顔のままだった。
高橋の部屋はテレビが1台あるだけで
殺風景なものだった。
「適当に座ってよ。」
高橋は床に足を伸ばして座っていたが
玲奈は座らなかった。
「とりあえずお礼は言っておくわ。
七瀬を助けてくれてありがとう。」
「どういたしまして、
まさか君と同居している
彼女が拉致されてくるなんてね~~
僕たちは赤い糸で結ばれているのかな?」
高橋はおどけて見せた。
「貴方が
ただの人殺しではないのはわかったわ。
けど、危険を犯してまでなぜこんなことを??」
「君も似たようなものだろ?」
「私はお金をもらって
依頼された悪人を殺している。
でも貴方は自分で悪人を探しているじゃない。」
「正義の味方なんだよ。僕は~~」
高橋は笑顔を作ったが
突然、かなり激しくせき込んだ
そして、血を吐いたのだ・・・
「あなた・・・まさか・・・」
「ばれちゃたかな?
そう、僕は病気だよ。
肺癌でもう長くわないよ。」
「・・・だから、悪人退治を始めたの?」
「そうだよ。少しでも世の中の
役に立ちたかったんだよ。」
高橋は急に真顔になった。
「嘘じゃないみたいね。」
「もう、僕には時間がないんだよ。
だから今度の殺しが最後になると思うよ。
的は現・大阪知事の近藤正彦
かなりの大物だよ。
どう、一緒にやらない?」
「悪いけど、
私は依頼者があって初めて動くの
ただの人殺しはしないわ。
じゃあ、私はこれで。」
玲奈はそう言って玄関に向かった。
「残念だよ。
でも、最後もきっちりやってのけるよ。」
高橋は玄関までやってきて玲奈を見送った。
「じゃあ、縁があったらまた会いましょう。」
玲奈は高橋の部屋を後にした。