終わった人 (講談社文庫) | |
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講談社 |
終わった人 内館 牧子(著)
あらすじ
大手銀行の出世コースから子会社に出向し、そのまま定年を迎えた田代壮介。世間からは「終わった人」と思われ、仕事一筋の人生を歩んできた壮介は途方に暮れる。美容師の妻・千草は、かつての輝きを失った夫と向き合えずにいた。壮介は「どんな仕事でもいいから働きたい」と再就職先を探すが、これといった特技もない定年後の男に職など簡単に見つかるはずがなく、妻や娘から「恋でもしたら」などとけしかけられたところで、気になる女性がいてもそう思い通りになるものでもない。しかし、すでに止まってしまったかに思えた壮介の運命が、ある人物との出会いから大きく動き出す。
もともとは脚本家・内館牧子さんの小説。6月に映画公開されています。舘ひろしさんが主演でもう68歳になったのだとか。ちょうどいい感じが出ています。まだまだ定年の年代には早いのですが会社員として生活している以上、いつかは引退するわけで改めて人生の意味を考えさせられる小説/映画であったように思います。
この定年後の姿を表した言葉として4月の桜の風景とともに散る桜、残る桜も散る桜 という良寛和尚の言葉が出てきます。
これはある程度年を取ってしまえばそもそも大きな差は出ない、死を受け入れなければいけないという諦観でもあるのですがこの諦めるというのは禅の世界では明らめる=人生の意味とは何かを明らかにするということを示している言葉です。
ある意味、死ぬということを知っているからこそ生きるということに真摯に向き合えるもの、その時に自身の人生に悔いが無かったのかどうか改めて向き合うことになります。もちろん受けとめるしかないこともあるのでしょうがそれを含めて自分を受け止めることができるようにやれるだけのことはやっておきたいと思わされた内容でした。
個人的には必要とされる限り死ぬまで働いていきたいと思ってしまうのですがいつまで元気でいられるかどうか、そのためにも今の瞬間をどれだけ大事にしていけるかだと思います。