現代のサッカーではまことしやかにどんな時でもなるべくルックアップして周りを確認する事がベストであるかのように言われている。
しかしルックアップには3つの重大な問題が存在する。
1. 反応時間
2. カラダのブレ
3. 距離感への影響
まず、こと密集での認知においては視覚は最適な知覚ではない。
視覚の単純反応時間の平均は0.18秒から0.2秒といわれている。
また聴覚の単純反応時間の平均は0.14秒から0.16秒だ。
つまり最大で0.06秒程の差がある。
これにサッカー選手の平均スプリント速度(30km/h)をかけると、0.06s×30km/h =0.5mとなる。
つまりだいたい半歩分だ。
最終ラインの裏に飛びだす選手の動き出しを確認してパスを出そうとする場合を考える。
上で計算した0.5mの違いは、ルックアップして動きを見て反応するか、足音を聞いて反応するかでパスの受け手の位置が半歩変わるというコトを意味する。
オフサイドとオンサイドの分かれ目になってしまうコトがありえるのだ。
次に、ルックアップにはもう一つ明確な欠点が存在する。
それは体の中で最も質量比が高いアタマというパーツを移動するコトで、カラダの軸がブレるという事だ。
その為、密集でムリにルックアップしながらパスをだそうとするとカラダの軸のブレがボールに伝わってキックミスを誘発することになる。
最後はさらに致命的だ。
たまにゴルフのパットにおいてホールをオーバーすると立て続けにパットをミスするという現象を見かけることがある。
これはオーバーするとボールのところまで歩いて行って、必ず一度ホール方向に「振り返らなければいけない」コトから生じるそうだ。
身体を上げて振り返ると三半規管が揺れることにより、距離感に一時的なくるいが生じる。
その為、次のパッティングをミスしてしまうそうだ。
サッカーにおいては密集したエリアにいる方が、ルックアップして頭を振って周りを確認する機会は多い。
空いているスペース、DFの位置、味方の位置。
密集の方がこれらの要素同士に角度がつきやすいからだ。
しかし、頭を振り距離感が狂っているのに自覚できない為、身体がブレていないのにパスが届かなかった、もしくは行き過ぎてしまったなどのミスが起こってしまう。
これがタチが悪いのは、正に「自覚できない」という点だ。
自覚できないため、「運が悪かった」もしくは「走った人間とタイミングが合わなかった」程度に認識してしまい、中々改善しようとする事ができないのだ。
次回はコンマ何秒の判断を求められる守備においては「頭を上げて周りを確認」という行為がいかに不利益になるかを説明しよう。