3年くらい前、ガロア理論に挑んで、良くわからないまま中途半端に退散した。あれであきらめたわけではないんだということを身をもって示すために、年末からまた勉強を再開した。再開といっても、さいしょっからだけど。
今回のテキストはこれだ。

図書館で見かけて、パラパラ眺めてみたら、これは勉強しやすいぞと顔がほころんだので借りた。ガロア理論のために必要最低限の群論やベクトル空間を、平易な文体で、しかも定理とその証明のレイアウトが明瞭。
これのおかげで、ようやく『ガロアの基本定理』と、『方程式の解の公式に関するガロアの定理』まで読み終えることができた。定理が言っていることのイメージを獲得できた。あいにく、なにも見ないで証明できるほど体得しているわけではないし、まったく知らない人にも説明できるほど理解しているわけでもない。

このモヤモヤにとどめをさすために、僕はついにこの本を買った。

もっとはやく買って読めばいいのにと思う人もいるかもしれないが、僕はためらっていた。もし数学ガールを読んで、それでもガロア理論よくわからなかったら、もう僕は数学むいてないってことになりはしないか。数年前『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』を買って読んで、後半の意味チョーわからなさに笑いがこみ上げてくいたのを覚えている。あれとおなじことがガロア理論で僕に起きてほしくはない。
だからどうしても、数学ガールよりも前に、数学徒(ネットでは数学を学ぶ志をたてた奴らのことをこう呼ぶらしい)が学ぶ専門書で、せめてガロア理論のアウトラインを理解しておきたかったのだ。

で、数学ガールガロア理論、読んだ。とても面白かった。文学的で詩的な美しい表現で、ガールたちが読者を数学の世界に連れてってくれる。特にガロア理論の壮麗さのひとつである、群(ぐん)の世界と体(たい)の世界が、徐々に徐々に重なっていき、ガロア基本定理によってそのふたつががっつりとかみ合っていく物語構成は、数学好きでよかったと目頭が熱くなるくらいだ。
とはいえ、第10章(ガロア理論の本丸の話)は一回読んだだけではやっぱり難しかった。何度か読んでおきたい。

第10章が難しい原因は、群論の定着の未熟さだと僕は反省した。そこで、今度こそ専門書で群論を一から勉強しなおした。専門書といってもこれだけど。
代数系入門
松坂 和夫
岩波書店
1976-05-27

1976年!だけど説明が丁寧で、練習問題も豊富。まるで個別指導を受けているような気分になれる名著だ。と、ある程度代数のことを分かっているとそう思える。まあ、「入門」だからそうなんだろうけど。
で最近、群論の章を、飛ばし飛ばしで読まないで、証明とか練習問題とかやりながら読んでいる。最近ようやく準同型定理までたどり着いた。何度目だ準同型定理。過去記事で何度か触れている。
でもあながち遠回りではない。特に、5次対称群の正規列についてはガロア理論でも本質的なところだ。っていうことを分かったうえで最初から群論を読むと、ちゃんとガロア理論を意識した記述があるんですよね、すごいですね数学書、今までそんなこと全然気づけなかった。
群論は抽象的すぎるうえ、似たような言葉が多い。
半群、対称群、置換群、2面体群、巡回群、剰余群、商群、単純群、可解群、部分群、剰余類、左剰余類、右剰余類、正規部分群、核、準同型、自然な準同型、上への準同型、trivialな準同型、同型、誘導される同型、・・・
しかも本によって使われる記号や意味が違うことはザラ。これも初学者にとっては敷居の高さになる。

もうちょいきちんと理解して、わりと人に説明できるようになったら、ブログにガロア理論をまとめて自己満足して完結しよう。いつになるかわからないけど、今回は出来る気がする。

あらためて思う。あんなチョーむずい数学の世界を、数百年前の高校生がひとりで建設してしまうんだもの。ただひたすら感服。そしてガロア理論の美しいのなんの!