時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

宿で、客にとって大事な要素

2018年08月09日 | 

旅に出て宿に泊ると、その部屋の窓からの景観というのはけっこう大きい。

宿の部屋に入り、まずは窓からの眺めを確かめることが私は多い。

窓から見えて嬉しいのは、海、渓流、渓谷、山など。

 

海が見えた場合、テレビなどをつけずに、窓から海の景色を見ているだけで、飽きない。

はるかむこうに水平線が見え、海原を包み込むように大空が広がり、よく見ると船が海に何艘か浮かんでいて、波打ち際では波の満ち引きの音が響いていると、それだけでたまらなく贅沢な気分になれる。

 

山間の一軒宿には渓流沿いの宿が多いが、渓流の眺めが見れるのも嬉しい。清流の中にゴツゴツした岩が立ち、水の流れが早い場所は水は白くなり、やがて流れの先で水は透明に戻り、流れていく。その流れの音だけで、癒される。

これも、渓流の流れを見ているだけでも飽きない。

 

遠方に山が見える景色では、それらの山に映る陽光の射し加減で山が着替えをしているかのように姿を変えてゆくのを見ると和める。

近くで聞こえる鳥や蝉などの鳴き声が、遠方の山を飾っているかのような景観もまた、見ていて飽きない。

 

こんな、宿の立地ならではの自然風景が宿の窓から見えると、他の景色や物音など何もいらなくなる。

 

 

だが、宿によっては、全ての客室からの眺めが良いとは限らない。

 

以前、某所に旅した時、ある宿に私は連泊したのだが、その宿は海辺に立つ宿だった。

だが私が案内された部屋は海に面していなくて、逆側の「街に面した」部屋だった。なので、客室の窓から見える景色は、街の景色。

よく見ると、街のはるか向うには山も見えていたのだが、いかんせん手前の「街景色」の占める割合が大きすぎて、遠方の山景色にはあまり存在感を感じなかった。

 

この景色を見ながら連泊するのか・・??と思った私は、フロントに行き、2泊目の部屋を替えてもらえないか交渉した。

せっかく海沿いの宿にきてるのだから、やはり窓からは海が見たい。

 

交渉の結果、海沿いの空き部屋に替えてもらえることになった。ただし、プラスアルファの値段はかかった。

確か数千円くらい追加料金がかかった。

だが、この先、その数千円を惜しんで、その旅が物足りなくなることのほうが私には惜しかった。

首尾よく2泊目の部屋として海沿いの部屋に案内された時、その宿の印象はがらりと変わった。

眼下に海が広がり、左右を見れば海岸線が続いているのが見えた。

雄大で、広がりがあり、一気に視界が開けた。最高だった。

 

なんというか・・同じ宿でありながら、1泊目と2泊目で、それぞれまったく別の宿に来たように思えた。

窓から見える景色が街と海では大違いだった。

この時、部屋を替えてもらってつくづくよかったと思った。

その数千円の違いは大きかった。

 

多分その宿への宿泊を申し込む時、私は少しでも安い部屋のほうを選んでしまったのだろう。

で、廉価な部屋と、オーシャンビューな部屋には、景観に値段以上の差があるように思えた。

 

おかげで、その宿の印象は1泊目と2泊目では大きく変わった。

 

だがこれは、その宿に連泊する予定だったから「部屋の比較」ができたのだ。

もしも1泊だけの予定だったら、街の景色が見える部屋だけで終わっていたと思う。そうなるとその宿の印象も随分地味になってしまったことだろう。

 

1泊だけ泊った宿での「残念な眺めだった部屋」の例はいくつかある。

たとえば、四国に泊った宿。

この宿はけっこう人気の宿だったらしく、私が申し込んだ時には、空き部屋は1室しかない状態だったらしい。

でもどうしてもその宿に泊りたかった私は、その「ラスト1部屋」でもいいから予約したい・・と申し込んだ。というのは、その宿の露天風呂に入りたかったからだ。

 

すると、宿のスタッフはどうも気乗りしない感じだった。

「その部屋しか空いていないんですが、いいんですか・・?」という応対だったから。

言外に「あまり良い部屋ではないんですが」というニュアンスをにじませながら。

この受け答えからも、その部屋にはあまり期待できないことは理解した。

とりあえず泊れて、風呂に入れればいいやと思い、その部屋でいいからと申し込んだ。

その部屋が実際にどういう部屋か分からないまま。

 

今思えば、宿のスタッフがその部屋をあまり薦めたくない受け答えだったのは、その宿なりの良心だったような気はする。

というのは、実際にその宿に行き、その部屋に案内された時、窓からの眺めがすぐに目に入ったからだ。

その部屋の窓のすぐ前には、お客さんが頻繁に行き来する通路があり、また、建物の鉄骨が目の前にあり、鉄骨の向うには壁もあり、遠方を眺められない眺めだったから。

遠方には山があったはずなのだが、それは鉄骨や壁に阻まれて見えなくなっており、代わりに目の前を頻繁に行き来する宿客の姿が見えた。

こうも客が部屋のすぐ前の通路を行き来するのでは、窓をあけるどころか、カーテンを閉めっぱなしにしておくしかなかった。

カーテンを開けていると、目の前を頻繁に行き来する客から私の居る部屋の中が至近距離から丸見えだ。

 

結局その部屋では、カーテンはずっと閉めっぱなしであった。なので、窓の外の景色を見るどころではなかった。

もっとも、カーテンを開けたところで、鉄骨や壁で、遠方の山など見えるはずもなかったので、カーテンを開けておく必要性もなかったのだが。

 

この宿の場合は、仕方なかったと思っている。宿の人はあまりお勧めしてこなかったし、予約するのが遅かった私もいけなかったのだし。とりあえず、その宿の自慢の風呂に入れただけでよしとした。

 

宿自体の立地は悪くない場所だったし、おそらく他の部屋の窓からの眺めはけっこう良かったはず。

ただ、まあ、窓からの景色という面だけで言えば、圏外ではあった。なので、景観という面での印象は・・ない。

 

 

 

まあ、この四国の宿の場合はあえて例外扱いしてもいいかもしれない。

それとは別に・・・さる避暑地で泊った宿は、かなり悲惨だった。

上記の四国の宿は「例外」扱いしてもいいが、さる避暑地での宿はどうにも印象が良くなかった。

なにせ私の泊った部屋は、隣の民家の玄関のまん前。景色もへったくれもなかった。

目の前は塀で、その塀の向うには隣家の玄関のドアがあった・・。

その宿では、夕飯も悲惨で、出前の料理だった。しかも、その時のおかずば・・私がアレルギーで食べられない小さめの海老フライ2本のみ。

あとはキャベツと、つけもの少々、味噌汁。

窓を開けると、隣家の塀がめいっぱい迫ってきている状態で、圧迫感すらあった。

なにやらその圧迫感のせいで、どこかの地下室にでも泊っているような閉塞感があった。

これなどは、私が泊った宿の中でもワーストの部類に入る。

まあ、ワースト・・という意味で、逆に印象には残ってしまっている。

 

宿の窓からの景観というものは、その旅そのものの印象を左右しかねないぐらい、大きな要素だと思う。

窓からの景観が良ければ、その宿の部屋にいて何もしないでいても、至福な時を過ごせる。

旅から帰ってきたあとの「旅の後味」もグッと良くなる。

だが、景観がイマイチだと、その旅の大きな要素のうちのひとつがつまらないものになる。

 

景観の良い部屋と、あまり良くない部屋の値段の差があまりも開きがあるならともかく、せいぜい数千円ぐらいの差なら、景観の良い部屋にしたほうが後悔はないと思う。

その旅の「後味」という意味でも。

後でその旅を思い出した時の印象が全然違うから。

 

もしそのお金を節約したいなら、いっそその旅には出なくて、別の旅のためにお金を貯めておいたほうがまだいいとすら思う。

 

 

 

 

 なお、写真のような「清流ぞいの宿」なら、窓から清流が見下ろせるから、実に癒される。 もちろん、文中で触れた残念な宿と、この写真の宿は関係ないので、念のため。


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2 コメント

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旅は眺めが全て (lemonwater2017)
2018-08-18 15:31:04
こんにちわ、象が転んだです。

私は殆ど旅はしないですが。沢木耕太郎さんの『深夜特急』を読んで、世界を旅行した様な気分に浸るのが好きです。

沢木さんの場合、安宿にしか泊まらない。先ず、部屋からの見晴らしを確認し、それから値段と期間を改めて交渉するという。迷った場合はいくつもの安宿を周り、一番気に入った宿を決めるという。まさに旅の王道ですね。だから、ハズレは一つもないと。

皆が皆、沢木さんみたいな研ぎ澄まされた交渉術を持ってれば、何処へ旅行しようが、楽しい事ばかりで怖くもないが。人がいい私は、すぐに騙されるから、どうも旅行は苦手です。でも、独り旅には憧れますが。
Unknown (だんぞう)
2018-08-18 17:30:31
その本は、私は不勉強ながら読んだことがありません。


でも、その旅行スタイルは良いですね。
確かにそういう旅スタイルなら、ハズレはないですね。
現地の宿に行ってみないとわからないことは、多々ありますから。

旅の日程に余裕があれは、ぞんな旅をしてみたいものです。

宿によっては、その旅は大ハズレになってしまいますからね、、、。

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