徳丸無明のブログ

雑文、マンガ、イラスト、その他

無印良品 ごぼうスナック

2020-05-15 23:05:18 | 
シンプルイズベスト!末永く愛されるであろう無印のごぼうスナックです。




本日は第7回私が好きなマンガの話。今回取り上げるのは松本大洋の『花男』(小学館・全3巻)です。
この『花男』というタイトルですけど、エレファントカシマシの曲名からきてるんですよね。ファンなのでしょう。その縁あって、エレカシのカバーアルバムのジャケットイラストに『花男』が使われています。ついでに言うと、新井英樹さんもエレカシのファンみたいで、『宮本から君へ』の主人公は宮本浩次から造形されています。
ただ、エレカシは大まかに言って「悲しみの果て/以前」と「以降」にわかれるんですけど、松本さんは「以前」のファンだと思います。「悲しみの果て」でブレイクしたエレカシ。この曲を機に、広く大衆に膾炙する、ポップなミュージシャンに転向したわけですが、それ以前はすごく尖ってたんですよね。
「花男」はファーストアルバムに収録されてるんですけど、その初期のころの、「尖ったエレカシ」を松本さんは(たぶん新井さんも)愛してたんじゃないかと思うんですね。
僕も「悲しみの果て/以前」のエレカシが好きでねぇ・・・。「デーデ」や「奴隷天国」みたいなパンクな曲なんかたまらないし、「浮雲男」や「上野の山」のような演歌調の曲も好きだし、「冬の夜」や「何も無き一夜」みたいな静謐な曲もいいし、「遁世」みたいな暗すぎる曲も沁みるし・・・。
え、マンガの話?
トランキーロ!あっせんなよ!

松本大洋さんはまあ有名ですよね。この『花男』は、「これぞマンガ!」っていう作品です。
僕はごくまれに「これぞマンガ!」と感じることがあります。その感覚はどこから来るのか。非現実的なキャラクターや世界設定、エログロナンセンスなどのキャッチ―な要素、目まぐるしいストーリー展開といった「過剰な要素」を極力削ぎ落し、シンプルな設定とストーリーだけで充分「魅せる」内容に作り上げている作品・・・。
そういう作品から、マンガの原初的な面白さが漂ってくるんですね。それが「これぞマンガ!」というマンガのことです。
で、この『花男』が、「これぞマンガ!」と感じられる数少ないマンガのひとつなのですよ。いい歳こいてプロ野球選手を目指している天然親父と、そんな父に反発しているニヒリストの息子の物語。マンガの原初的な面白さと、松本さん独自の、のびやかで個性的な画風がすごくマッチしてて、奇跡的な仕上がりになっています。
こういう作品を1本残せただけで、作家としては成功と言っていいんじゃないでしょうか。
僕は『花男』以外では『ピンポン』と短編集の『青い春』が好きですね。『鉄コン筋クリート』はそれほどでもないです。そして『GOGOモンスター』、『ナンバーファイブ』あたりで、「松本さんは僕が好まない方向に行こうとしてるな」って思って、それ以降はフォローしていません。今も描いていらっしゃるんですかね?


ここで新型コロナウイルス関連身辺ニュース、および雑感。
福岡は昨日緊急事態宣言が解除されました。これで飲食店が通常営業に戻ってくれればありがたいです。

僕は新型コロナにかんしては、一貫して「火消し」を意識してきました。メディアというのは、基本的に「大袈裟」に騒ぎ立てます。騒ぎが大きくなるほうがお金になるからです。そして世間の側にも、騒ぎたい、騒ぎに乗じたい、という願望をかかえた人たちがいます。
「騒がせたいメディア」と「騒ぎたい世間」がスクラムを組み、循環構造を生み出すと、騒ぎはどんどん大きくなっていきます。実際の問題以上に、「騒ぎ」のほうが大きくなってしまう。
さて、新型コロナウイルスは、どれほどのものでしょうか。「騒ぎ」と「実態」の間に、かなりの落差があるのではないでしょうか。
現在までで感染者数は約16000人。死亡者は約700人。
あくまで数字だけ見るなら、それほどの被害は出ていませんね。もちろん日本の抑え込み対策がうまくいったからでもあるでしょうけれども。これぐらいならインフルエンザや旧型の肺炎のほうがよっぽど死者を出してるでしょう。「正しく恐れよ」って言葉が繰り返しつぶやかれてましたけど、それは「恐れすぎるな」とか、「恐れによって、コロナを実態以上に大きく見せるな」ということでもあるはずです。
僕が火消しを心掛けていたのは、騒ぎを実態以上に大きくしたくなかったからであり、意見を相対化するために、あえて世間とは反対の意見を述べる必要がある、と考えたからでもあります。「皆さんそうおっしゃってますけど、こういう考え方もありますよ」ってね。そうすりゃ騒ぎもいくらか治まり、人々の頭も少しは冷静になるだろうと期待したのです。
パチンコ屋もそうですよ。営業自粛しないパチンコ屋が連日批判的に取り上げられていましたけど、パチンコ屋で感染が起きたという話は1件もありませんよね(今のところは、ですけど)。もちろんそれは結果論です。たまたま感染が起きなかった、というだけなのかもしれない。それに、感染の発生の有無にかかわらず、3密を避けなかったという点は道徳的に非難されて当然なのかもしれない。
でもそれと同時に、メディアと世間には、パチンコ屋に批判的な態度を取り続けてきたことに対する反省が、多少はあってしかるべきではないでしょうか。営業をやめないというだけで批判していい、と考えるのは正しくないのではないでしょうか。国か自治体が、自粛要請してすぐに、休業しても困らないくらいの補償金を提示していたならともかく、店舗にしてみたら安心して休業できる状態になかったわけですからね。

僕は「ひとつになれ」という言説に、どうしても気持ち悪さを感じてしまいます。
動物行動学では、「ひとつになる」のは、非常に危険なこととされています。遺伝情報がみな同じだったら、伝染病が発生したときに一気に絶滅してしまうかもしれない。小魚がスイミーよろしく一塊になっていたら、クジラにひと飲みにされて全滅してしまうかもしれない。
だから遺伝情報はできるだけバラけていたほうがいいし、群れの中には全体とは違う行動をとる個体が1~2割はいたほうがいい、とされています。それが生物にとっての生き残り戦略なのですね。
だから、日本で今言われてるように「ひとつになれ」という訴えは、極めて危険な、生き残り戦略に反した意見だと思うのです。生き残り戦略を念頭に置いて考えると、営業をやめなかったパチンコ屋と、そこに通い続けた客は、「集団とは違う行動をとる1~2割の個体」だと言えます。だから、僕は彼らをわりと好ましく感じていました。
もちろん天敵に襲われた場合、群れを成している集団よりも、別行動をとっている1~2割のほうが先にやられがちですし、パチンコ屋に通い続けていた客のほうが、そうでない人よりも、確率的には新型コロナに感染しやすかったでしょう。
でも、動物行動学的には、ひとつになってはいけないのです。ひとつになることほど危険なことはないのです。生き残りたいのであれば、ひとつになってはいけない。僕が「ひとつになれ」というメッセージに気持ちの悪さを感じてしまうのは、生き残り戦略に反しているからです。
「お前がそうしたいならそうすればいいよ。俺はこうするから。どっちが正解かはわからないけど、どちらかは生き残るだろうさ」。そうやって行動をバラけさせるのが、絶滅を避け、種を存続させるための必須の策略なのです。
日本人は、「ひとつになれ」というメッセージに対する抵抗感が弱すぎます。先の戦争の翼賛体制や、一億総玉砕を持ち出すまでもなく、ひとつになるのは危険であることは明白です。「ひとつになれ」というメッセージに、本能的に反発してしまう人がいることは、多様性が確保されていて、種が生き残る可能性が高い証拠です。それは肯定的に捉えられなくてはなりません。
マジョリティとは違う発言をして意見を相対化するのも、集団と離れて別行動をとるのも、どちらも同じことです。いずれも「多様性を確保する」という目的に則した行為なのです。
ひとつになりたくてしょうがない人たちは、本気で総玉砕(絶滅)したがっているのでしょうか。北朝鮮のマスゲームを見て、うらやましく思っているのでしょうか。
ひとつになりたくない人がいるなら、放っておきましょう。それは、集団の多様性が担保されているという、きわめて健全な証なのですから。集団とは違う行動をしている彼らのほうが、生き残ってくれるかもしれない。ひとつになって全滅するより、バラバラになって生き残るべし、です。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
俺は (和田ヶゐ)
2020-05-16 00:12:27
7人ぐらいに分離して(能力等はコピー。記憶は共有)色んな事をしたいです(ちょっと意味は違うけど)(@_@)
和田ヶゐさん江 (徳丸無明)
2020-05-16 22:29:29
それ「パーマンのコピーロボットが欲しい」ってことでしょ。
僕も欲しいです。
いや (和田ヶゐ)
2020-05-16 23:39:52
鼻押したら元に戻るような不完全ロボットはいりません(ですよね????)(@_@)
和田ヶゐさん江 (徳丸無明)
2020-05-17 23:12:45
不完全って・・・、そりゃそうですけど。
でもそういう欠陥というのは、オリジナル(本人)がコピーに取って代わられることがないように仕込まれた安全弁とも言えるのですよ。
人間は (和田ヶゐ)
2020-05-18 23:29:06
成長するから、コピーには負けませんよ。てか、負けるようなら、コピーの方がマシかもしれません(@_@)
和田ヶゐさん江 (徳丸無明)
2020-05-19 23:16:15
負けっつーか、コピーが周囲を騙してホンモノのフリをし始めるってことですよ。
よくSFであるでしょ、ニセモノとホンモノが入れ代わるって話。

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