自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

明治維新は世界を幸福にしたか~大政奉還から大日本帝国憲法制定まで(改訂版)

2020-03-28 14:32:39 | 自然と人為

 戦争は国の暴走で、国が最もしてはいけないこと、許されないこと。戦争を放棄した日本国憲法は日本の宝、世界の手本。憲法は文章であり、安倍政権のように書かれている本質ではなく、解釈によってその運用を変化されるので、憲法の精神を守るのは、今だけでなく次の世代まで国民の責任である。
 その時その時の利害によって利己的に状況を判断していると、メディアにもその傾向があるので判断を誤る。特に政治に関しては無関心でいないで、常に与えられた状況が「世界の人や日本の国民を幸福にする方向なのか」と自問する責任がある。

 日本では黒船来航と尊王攘夷で活躍した勤皇の志士を英雄視するが、その日本が朝鮮に対しては1876年、日朝修好条規/江華島条約の締結を求めたように、黒田清隆率いる日本の黒船で開国を迫り、やがてアジアへの侵略覇権の道を歩んだことを忘れてはいけない。同時に、江戸幕府による開国と江戸城無血開城が日本を救ったことも。
 そして、明治維新は世界の人や日本人を本当に幸福にしたのか、勝者の歴史に隠された事実を検証して見ることも必要だ。
 参考:幕末から明治維新まで
     明治維新で人々は幸せになったのか


 「大日本帝国憲法」発布 1889年2月11日
 「国民が国家に対して”万歳”と呼ぶ言葉を覚えたのも
 確かこの時から始まったように記憶している。」 
 参考:永井荷風『花火』(2)
 BS歴史館「帝国憲法はこうして誕生した~明治・夢と希望と国家ビジョン」

 260年戦争をしなかった江戸幕府が1867年に大政奉還をしたが、その前日の10月13日に出された偽の「討幕の密勅」を含めて岩倉具視や大久保利通らが計画実施した徳川幕府を廃絶し、徳川慶喜の「辞官・納地」、内大臣辞任と領地を朝廷に返上させるクーデターとされる「王政復古の大号令」が慶応3年12月9日(1868年1月3日)に発せられ、明治政府の基本方針である五箇条の御誓文が発表された。
 なお、明治天皇の即位の礼は慶応4年8月27日(1868年10月12日)で慶応4年9月8日より明治に改元した。したがって、慶応4年9月8日が明治元年9月8日と同日(西暦では1868年10月23日)となる。

 明治新政府が発足した翌年の鳥羽・伏見の戦いに始まる戊辰戦争を経て1869年5月函館戦争(五稜郭の戦い)まで内戦が続いた。新政府は1871年12月23日に旧幕府が条約を結んでいた各国への表敬訪問と、不平等条約改定の予備交渉のために岩倉使節団(2)を欧米に派遣した。当初の10か月の予定が約1年10ヶ月という長期に亘り、1873年9月13日に帰国した。彼らは「万国平等」という理念の「万国公法」を予備知識としていたが、欧米諸国の文明の発達と力による植民地政策等を知り、ドイツのビスマルクに会い、「小国独立の秘けつは憲法にあり」と憲法の必要性を認識した。しかし、明治六年政変西南戦争があり、憲法制定作業は遅れる。一方、下野した板垣退助等の自由民権運動により、私擬憲法は60以上にもなり、国民意識が庶民の中に拡がっていく。これに対して1881年に明治23年に議会を開く約束がされたことで、憲法起草から政党作りへと国民の運動は変わっていく。そして伊藤博文は憲法調査のために1882年に渡欧したが、「憲法」や「議会」の前に「行政」を重視し、1885年12月22日に内閣制度の制定をし初代内閣総理大臣となる。「大日本国憲法」制定については、BS歴史館「帝国憲法はこうして誕生した」(動画)をご覧いただきたい。この番組の後半では、日本が戦争への道を歩んだ原因は「大日本帝国憲法」にあるのではないかという指摘に対し、それは「後知恵」だとし、「最初は”行政”重視。いずれは”民”中心の政治へ。」とか「”憲法”の運営は次世代に託された」と解説し、伊藤博文は「1907年に憲法改革」を考え、"統帥権"を内閣のコントロール下に置こうとしたと解説している。しかし、明治40年(1907年)には日露が清国から得た権益を相互に尊重することを定めた密約の日露協約が後の「韓国併合」につながり、同年には第2回万国平和会議で日韓協約によって日本に奪われていた自国の外交権回復を訴えようとしたハーグ密使事件もあったが、これについてはどう考えるのか。1894~1895年の日清戦争、1910から1911年に起きた明治政府の捏造による大逆事件をどう説明するのか。少なくとも「大日本帝国憲法」は世界の人も日本人も幸福にはしていないと思うが、未だに真実を探すのではなく、明治政府という勝者に味方する論議が多くみられる。この問題はもう少し考える必要があろう。


初稿 2017.5.18 更新(改訂版)2020.3.29

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