彼を知り己を知れば百戦殆うからずとは、孫氏の兵法ですが
洗濯にも通じる物があると感じる、洗濯オヤジです。

洗濯で言う彼(敵)は汚れ、己は洗濯物の素材と考えれば、洗濯作戦も立てやすくなるのではないかと思います。


今回は己となる、洗濯物の繊維素材について考えてみましょう。


繊維は大きく分けると、天然繊維と化学繊維の2つに分けられます。

さらに、天然繊維は、植物繊維と動物繊維に、化学繊維は、再生繊維、半合成繊維、合成繊維に分けられます。

そのなかでも、衣類によく使われる素材についての特徴などをまとめて行きたいと思います。


1.天然繊維

(1)植物繊維
  植物繊維は、植物から採れる繊維で、種子毛繊維(植物の種子を保護する毛を繊維にしたもの)、籾皮繊維(植物の茎から採れる繊維組織)、葉脈繊維(植物の葉からとる繊維)、その他(ヤシ繊維)の4種類からなり、主に衣類に使われるのは、種子毛繊維(綿)と籾皮繊維(麻)の2種類です。       


① 綿(種子毛繊維)
 綿は天然繊維の中でも、最も多く使われ、丈夫で吸湿・吸水性、保温性、耐熱性、耐洗濯性がよいので、もっとも衣類に使われていて、一番なじみのある素材です。
 
洗濯の注意点
 植物性の繊維なので、シワになりやすく、染色の強さや縮み具合が製品によって違うので、初洗いするときは特に要注意です。

② 麻(籾皮繊維)
 麻は、茎から採れる籾皮繊維と、葉から採れる葉脈繊維のの二種類がありますが、葉脈繊維は太くて硬く、衣類には適さないので、ロープなどの資材に使われます。
 麻の手触りは硬く、吸湿性があってサラッとしてべとつかないので、夏向きの衣料に適しています。
 衣料用に適しているのは、麻らしい感触で涼感に優れたラミーと、柔らかく綿に近い風合いのリネンです。
 
洗濯の注意点
 綿よりも更にシワになりやすく、色落ちしやすい繊維です。
 白いものは洗いやすいけど、色物の場合は色落ちに注意。
 脱水によってきついシワをつけると、シワが消えにくかったり、折れた部分の色が抜けたりするので、洗濯ネットを使うなどして、スレやシワに気をつければ洗えるものも多くなります。

  
(2)動物繊維
 動物繊維は、動物から採れる繊維で、獣毛繊維(哺乳動物の体毛から採れる繊維)と、絹繊維(蚕のつくる繭から採れる繊維)の二種類です。

①毛(獣毛繊維)
 羊毛や、羊毛以外の毛(アンゴラ、カシミヤ、モヘアなど)で作った獣毛繊維です。


・羊毛
 動物繊維の代表である羊毛は、めん羊から刈り取った毛で、弾性に優れ、シワになりにくい。またかさ高性があって空気を多く保持するので暖かく、特に秋冬物衣料として使われる。
 繊維の表面にあるスケール(ウロコのようなもの)が閉じたり開いたりすることで、湿度コントロールをします。 水に濡れた状態ではこのスケールが開きますが、この開いた状態の時にもんだりこすったりすると、繊維同士が絡んでしまい、縮みやゴワつきが起ります。これがひどい状態になると、フェルト化という状態になってしまい、ほとんど元に戻らないので注意が必要。
 湿った状態の時には、伸びたり縮んだり、形が変わりやすいので、干し方にも注意しましょう。
 
・アンゴラ
 アンゴラ兎から取れた毛で、手触りがソフトで暖かい。
 捲縮とスケールがなく、静電気が発生しやすく、単独で糸にしにくいため、ナイロンや羊毛と混紡した物が多い。
 細かい毛が抜けやすく、洗濯中に逆汚染や風合い変化が起こりやすい素材なので、洗濯は慎重にする。

・カシミヤ
 カシミヤ山羊の防寒用の柔毛を梳きとったもので、繊維の太さは羊毛よりさらに細く、絹のような光沢と柔軟で独特のぬめりがあり軽くて暖かい。 
 羊毛よりも繊維が細かいのでしなやかさがありますが、反面、耐久性としては落ちる。伸縮しやすいためデリケートに扱う必要があります。

・モヘア
 アンゴラ山羊から取れる毛で、アンゴラと混同しやすいが、まったく違う繊維。
 繊維は太く長く、白くて光沢があり、弾力がある。
 繊維の太さは、山羊の成長につれて、太くなる。
 カシミア・アンゴラに準じた取り扱いをすればいいですが、モヘヤは、フワフワとした毛が表面にあるので、それらが絡まったり、縮れたりして風合いの変化が起こりやすいので注意が必要。

・キャメル
 2つこぶラクダの体毛のうち、内側の細くて柔らかい繊維を使用する。
 毛質は、カシミアより太く、コシがあり、膨らみもある。
 羊毛と混ぜて、オーバーコートや毛布などの高級素材として使われる。

・アルパカ
 南米ペルーの高地に生息する、らくだ科の動物から取れた毛
 繊維はやや太く、光沢とぬめり感がある。
 冬物のセーター、オーバーコート用素材の他、綿糸との交織は滑りがよく摩擦にも強いので、洋服の裏地に利用される。 

・ビキューナ
 アンデス山脈の高地に住むらくだ科で、捕獲を禁止されている保護動物
 羊毛より上質で柔らかく、すべての獣毛の中で最も細く、高価でめったにみられない最高級の素材
 高級なコート、礼服などに使われる。

洗濯の注意点
 洗濯表示では水洗い不可になっているものが多いと思います。クリーニング店に出した方が無難かも知れませんが、それでもホームクリーニングしちゃうぞってときの注意点は 
 毛繊維はたんぱく質なので、アルカリで繊維が傷みます。
 家庭で洗うときの洗剤は中性のデリケート洗剤を使用し、水に浸かっている時間は極力短時間で、洗濯ネットを利用して、もんだり、こすったりしないデリケートな洗い方が必須。
 水温が高いとスケールが広がりやすくなるので、あまり高温にはせず、常温の水かぬるま湯で、温度変化が無いように洗うのがいいと思います。


②絹(絹繊維)
 蚕が連続吐出してつくった繭を湯に浸けて、ほぐして引き出した繊維で、天然繊維で唯一の長繊維。
 生糸は「フィブロン」とそれをとりかこむニカワ質の「セリシン」で構成されていて、精錬によりセリシンを除去することで絹本来の優美で上品な光沢、柔らかい風合いが得られる。
 しなやかさと、吸湿性に優れ、繊維の中の最高級品です。
 
 素材の中で特にデリケートに扱いたい素材。洗濯する場合は、色落ち、シワ、縮み、スレなど、あらゆることに注意が必要。



まとめ
 コインランドリーや家庭の洗濯機で普通に洗える素材は、洗濯表示で水洗い可能なものとなり、素材のほとんどは、綿、麻、ポリエステルになると思います。
 コインランドリーでは細やかな設定ができないので、羊毛や絹などのデリケートな素材の洗濯は難しいかも知れません。 
 家庭では、洗濯機のコース設定や、手洗いなどの洗い方で、ある程度は洗える素材も増えますが、洗濯前に洗濯表示などをよく確認し、難しい物は無理せずクリーニング店などに相談しましょう。

次回は、ポリエステルなど、主な化学繊維の特徴についてまとめてみたいと思います。