【特許紹介】禁煙患者の虚偽の申告があっても適切な禁煙治療をする特許発明(キュアアップ)を紹介

 今回は、禁煙治療に関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、ニコチン依存症の治療で虚偽の申告がされると適切な治療ができないという問題があります。

 この発明では、喫煙したかどうかと、生体から計測される情報とが整合するかを判断します。これにより、禁煙患者の虚偽の申告があっても適切な禁煙治療をすることができます。



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ニコチン依存症の治療で虚偽の申告がされると適切な治療ができない問題

 喫煙を継続的に行っていると、喫煙習慣を断つことが難しいです。かんたんにいうと、禁煙が難しい、たばこをやめるのが難しい、ということです。

 継続的な喫煙をしていると、ニコチン依存症になると言われています。ニコチン依存症の身体的依存については、ニコチン製剤などの禁煙補助薬による療法が使われます。このような療法で禁煙を成功したとしても、その後に再び喫煙してしまうことも多いです。

 ニコチン依存症の治療では、喫煙を行ったかどうかの確認を患者にしますが、虚偽の申告がなされることもあり、適切な治療を行うことができないという問題があります。

喫煙したかどうかと、生体から計測される情報とが整合するかを判断

 この発明の禁煙患者のためのプログラムでは、患者から申告された情報と、患者の身体から計測される情報との整合性を判定して、禁煙の適切な治療をすることができます。

 具体的には、まず、患者が喫煙したかどうかを示す情報を患者からの入力によって受けます。

 また、患者の身体から測定できる指標、例えば、呼気のCO濃度(一酸化炭素濃度)を計測します。患者が喫煙すると呼気のCO濃度が上昇するので、CO濃度がある程度高いことは、患者が喫煙したことを意味します。

 そして、患者が喫煙したかどうかを示す情報と、患者の身体から測定できる情報とが整合しているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて治療に関する情報を生成します。
 
 なお、整合していない場合には、患者を責めるわけではなく、患者をフォローするようなメッセージを表示する例が記載されています。あくまで患者を禁煙に導くツールだからですね。

 このようにして、患者の申告情報と計測情報とに基づいて、禁煙患者の虚偽の申告があっても適切な禁煙治療をすることができます。

 特許第6339298号 株式会社キュア・アップ
 出願日:2017年4月20日 登録日:2018年5月18日

【課題】
喫煙申告と生体指標濃度測定値との整合性を判定し、その結果に基づいて適切な禁煙治療を提供する。
【請求項1】
 禁煙患者のために使用されるプログラムであって、コンピュータに、
 患者によって入力された喫煙の有無を示す申告情報を受信する段階と、
 喫煙状態を示す生体指標の濃度を測定する生体指標濃度測定器によって測定された前記患者の生体試料の生体指標濃度測定値を受信する段階と、
 前記生体指標濃度測定値及び生体指標濃度基準値に基づいて、前記生体指標濃度測定値と前記申告情報との整合性を判定する整合性判定段階と、
 整合性判定結果に基づいて、前記患者に対して実行する禁煙治療法のための禁煙治療情報を生成する段階と、
 前記生成された禁煙治療情報を患者側装置に送信する段階と、
 を実行させるプログラム。

今日のみどころ

 禁煙患者が虚偽の申告をすることがあるという問題を解決するための発明で、ポイントは、患者の申告情報と生体からの計測情報とが整合するかどうかを判定するステップがあることです。

 いわゆるソフトウェア特許に該当すると思います。

 このようにまとめてしまうと、ふつうの技術のように思えますが、このような技術が過去になく、また、当業者が容易に思いつかないと認められればしっかり特許をとることができます。すばらしい!