Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

稀有に偉大な天才指揮者

2020-02-17 | 文化一般
土曜日のベルリンからの中継を聴いた。ペトレンコ体制になってからその前の「悲愴」は別として、今回の初ツアープログラムが最も素晴らしい。インタヴューでも話しているように今回は音楽祭を除いては初めてのツアーで、ベルリンで特別に四回も同じプログラムで準備をしている。放送されたのは四晩目で、ある程度出来上っていたかに思えた。

後半のラフマニノフは、まだまだツアー中に良くなると思うが、前半は特に二曲目の「アラゴアーナ」は圧巻だったと思う。放送録音をもう一度流すと、一曲目の三楽章の交響曲と共に若干ベルリンのフィルハーモニーの鳴りに不満はある。生で聴くと違うことは当然としてもその残響感と共に音の粒立ちは最新の名ホールと比べると若干色落ちする感は否めない。

デジタルコンサートホールの前半が終ったところでいつものようにインタヴューが流れた。これがなかなか面白かった。聞き手とキリル・ペトレンコの相性や相互理解の仕方がその面白さにも反映する。楽曲とプログラミングの説明以上にツアーに向かう心掛けとかその意味合いを語らせる前にインタヴュワーがロマンロランの言葉で切り込んだ。苦境にあったロランがボンで開催されたベートーヴェンフェストにて芯から揺すられて蘇生できたというのだ。「そんなことが今ありますかね、そんな人が居たら会ってみたい」と質問されて、キリル・ペトレンコは次のように答えた。

「まさしく私たちの仕事の意味はそこにあります。私たちの音楽が音楽会が、感情的に揺さぶり、そしてどこか肯定的なものを与えて、人々の心を蘇生する。」、

「(想い浮かべて眼を光らせて)個人的にも肯定的なフィードバックを得ていて、聴衆の中に座っている人がそうした力を貰っていると」、

「彼らの人生において、とても辛く様々に苦しんでいて、自分の居場所すら見つからなくて困っている人々が、その境遇に流されて留まる事すらただならない人々が、そこにクラシック、特にべート―ヴェンが救いを与えるというのです。」、

「だからそのために(演奏会で音楽を)私たちは可能な限り集中してやらなければいけないのですよ。」。

こんな立派な音楽家や芸術家の話しを聞いたことが無い。この指揮者が喝采する聴衆へ向ける視線はまた異なる。そしてそのような思いで聴衆から喝采を受けているのである。天井桟敷を見上げたりする表情には愛があることは嘗て日本公演の際の写真を見て呟いたことがあったが、なにもそれは嘗ての若い彼自身に重ねられて向けられた視線だけではなかったのだ。音楽的な天与に恵まれた天才がこれほどの人間性を有していることに驚愕するしかない。

そしてツアーに出て、更に自分たちの出来る全てをそこで示すことで天職がなされると、今回のお披露目国内初ツアーに向けての抱負を語っている。実際最後の抱負だけならば楽団員も「上手に言うわ」で終わるかもしれないだろうが、ペトレンコの自らの職業的な使命感を聞かされると到底いい加減な気持ちではいられなくなる。要するに楽団員も我々聴衆も彼のその貴い精神に魅了される。

ハムブルクへの出発に向けてエンジンオイルの点検をして最低ラインから少し減っている分を足した。少々上だろうが、1200㎞ほど走って帰ってくると最低ライン以下に減っているだろう。まあ、快適に動いて欲しい。少々エンジンと燃えて貰っても仕方がない。天候も氷点下には絶対なりそうにないので洗浄液が凍ることも無いだろう。気になるバッテリーも通常ならば大丈夫だろう。あとはそれ以外の故障が起こらない様にゆっくり巡航運転するしかない。

土曜日の録音もタブレットに入れた。楽譜も入っている。往路の宿までで、最低四回近く聴ける。予定通りに宿に着けば楽譜を確認する時間もある。前半の特に「アラゴアーナ」がどこまで頭に入るか?今回聴いてみて、勿論ボレロのパロディだけでなくて、スペインラプソディーのラヴェルのそれに気が付いた。二楽章に於いてのリズムなどあまりにも立派な演奏なので今まで気が付かなかったことが見えて来た。序曲は単独コンサートピースと組曲との二種類があることも分かった。生演奏で、それもエルフィーの分析的な音響は興奮させるに十二分だと思う。またどちらかというと滲みがちなアルテオパーでのコンサートマイスターのダイシンが率いるラフマニノフはそれをしても聴く価値があることを十二分に確認した。ケルンの音響は分からないが、予想通り通常楽器配置での今回のプログラムには結構いいのかもしれない。ペトレンコはそこまでも考えている指揮者でもある。

体調は気温の差などもあり長い運転を愉しむほどに優れないが、何とか万全といきたい。あとはピクニックの用意だけだ。月曜日の朝はコーヒーとお茶を煎れる以外にはほとんど出来ない。



参照:
ブラジル遠征旅行の土産話し 2020-02-16 | 文化一般
既に感動している音楽会 2020-02-15 | 音



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