一人稽古〜「乗らずに練習する」方法 | 馬術稽古研究会

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従来の競技馬術にとらわれない、オルタナティブな乗馬の楽しみ方として、身体の動きそのものに着目した「馬術の稽古法」を研究しています。

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  競技選手というわけではない、大半の乗馬愛好者の皆さんにとっては、週一回程度のクラブでの騎乗が、唯一の練習の機会であり、かつ「本番」ということになると思います。

  貴重な騎乗の機会を充実したものにするために、あるいはそこで覚えた感覚を忘れないために、家でも練習出来れば、とお考えの方も多いのではないでしょうか。


  しかしながら、乗馬というのは当然ながら、馬と、乗る場所があって初めて出来るものですから、他のスポーツで行われるような素振りとか自主練習といったことはなかなか出来ません。


   というわけで、ここでは馬に乗らなくても出来る、乗馬の随伴や扶助操作に必要な身体の使い方や感覚を養うのに役立ちそうな「一人稽古」の方法について、考えてみたいと思います。



①「膝立ち」の稽古

   まずは、軽速歩でしっかり鞍からお尻を浮かせることができない方が、とりあえず「立てる」ようになるための方法です。

  軽速歩では、鐙を足で蹴って立ち上がろうとしても足が前に行ってしまったりして、腰が馬の前進する動きに遅れ、尻もちをついてしまいます。

  そこで、思いきって腰をぐいっと前に出して膝で体重を支えるバランスを身体で覚えるために、まずは床の上で「膝立ち」をしてみましょう。
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  正座(出来れば、そこから更に膝から下を開いた、いわゆる「女の子座り」の方がいいでしょう)の状態から、腰をぐいっと前に突き出すようにして膝立ちの形にもっていきます。

  この動きを、1で立つ、2で座る、という具合に一定のリズムで繰り返しながら重心移動の感覚を養うことで、軽速歩でもとりあえず立つことが出来るようになるでしょう。


②「蹴らずに動く」稽古

  真っ直ぐ立った状態から、足先に力を入れて地面を下向きに押してみると、身体は後ろに倒れそうになるでしょう。

  逆に、同じ姿勢から、足先を浮かそうとすれば、身体が自然に前に傾いて、足を踏み出さなければ倒れてしまうようなバランスになるだろうと思います。


  それを確認出来たら、今度は、スキージャンプのようなイメージで、軽く屈んだ姿勢から膝を伸ばしていく動きを行ってみます。
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  足の爪先ではなく、「かかと先」(かかとの後ろの丸くなった部分)あたりに意識をおき、そこを地面に残しながら、足先を浮かすくらいのつもりにして膝を伸ばしていくと、自然に身体が前にいきますが、

逆に、爪先に先に力が入ると、上体が早く起きて、重心が浮き上がるような感じになると思います。

  足先で地面に踏ん張る力というのは、重心が前に行くのを止める「ブレーキ」として働く、ということがわかると思います。


  これを行う前に、引き上げた足を爪先からでなく踵からそっと下ろすようにする「かかと足踏み」を何回か行ってからやってみると、身体のつながりが生まれ、更に安定感が増すでしょう。


  軽速歩で立つときにも、足先で鐙をガツンと蹴るのではなく、踵を地面に残すようなイメージで、腰をスッと伸ばしながらお腹を前に出していく感じにすると、あまり踏ん張ることなく、自然に膝立ちのバランスになれると思います。

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③「蹲踞」の稽古

  ここまでの「膝立ち」のバランスは、とりあえず立てるようになるためのもので、ずっとそのままでは、脚が効かない、鐙がズレたり前のめりになったりしやすい、というような問題が出てくることになります。

  これらの問題を解消するためには、「鐙に重心を乗せたバランス」を保つ感覚を養う必要がありますが、そのために有効な稽古方法として、以下のようなものがあります。



  まず、両足の踵を揃え、爪先をやや開きます。

  そこから踵をやや浮かせ、足先に全体の重みがかかっていることを感じながら、股関節を開き、上体を真っ直ぐにして座ってみます。

  これは、相撲や剣道などでみられる「蹲踞」のような、足先の上に重心を載せた、動き出しやすく、馬の動きを邪魔しないバランスを養う稽古方法です。

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  小さな踏み台などに乗って、落ちないようにバランスを保つようにしても良いでしょう。

  そのまま、両踵の間にボールなどを挟んで軽く屈伸運動を行ってみると、常歩や軽速歩で鐙に乗りながら脚を使えるようになるための稽古として、非常に有効だと思います。



  さらにこの形から、両腕を手綱を持つような形にして、鞄など少し重みのあるものを吊り下げて、その重みを「お姫様だっこ」をするときのように腰を入れて全身で支えるようにすると、膝で挟んで堪えるのとは違った「腰を張ったブレーキ」の稽古になります。

  足先を支点にして、「井戸の釣瓶」のように、自分の腰が落ちようとする重みと腕にぶら下げたオモリの重さとが釣り合うようなイメージで身体を使うと、比較的楽に、重みを支えることができます。

  

④「片足立ち」の稽古


 駈歩では、骨盤を後傾気味にして上体をうねらせるようにしてお尻を動かかすことで、とりあえず座っていられるようにはなるのですが、より馬の動きに一致した気持ちのいい騎乗のためには、馬の前後上下の揺れだけでなく、左右方向への動きを感じることが大切です。

 駈歩では、馬の外方肢の着地後、馬の内側の半身が前に出て、内方肢が着地するのに伴い、重心も外方から内方へと移動していきます。
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  ですから、騎手の重心も馬の動きに合わせるように、内方の鐙の上へ移動していくようにしてやる必要があります。


   この感覚を、騎乗せずに養う稽古として、パカタン、パカタン、と唱えながら、パカタンの「タン」のタイミングにあわせて、軸足を踏ん張ると同時に、同側の脇腹辺りを前に張り出すようにして「片足立ち」のバランスになる、という動きが有効です。

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  さらに、パカタンの「パ」のタイミングで、片足で体重を支える足のふくらはぎのあたりを反対側の足の踵で軽く蹴り、その足を素早く戻すと同時に重心移動して片足立ち、というようにしてみると、駈歩の随伴の動きの中で脚を使う感覚の練習になるだろうと思います。









  馬に乗らずに乗馬の練習をするためには、馬の動きやそこに働く力への理解や、それらをイメージする想像力も必要ですが、

下の動画なども参考に、身体の使い方を色々工夫してみるのも、日常の心身のストレスを解消するためにも良いのではないでしょうか。