足裏の感覚を呼び覚まし、動き出しやすい立ち方を体認しながら身につけることが出来るトレーニング器具、『牧神の蹄』の考案者の中村孝宏先生のブログです。
写真で見ると、一般の人に比べて足趾の可動域が明らかに大きいことがわかります。
誰でも赤ちゃんの頃には、足趾でものを掴もうとするような反射運動がみられるといいますが、
成長とともにいつの間にか、「足指で掴む」というような感覚は薄れていき、
代わりに、脹脛の筋肉を使って足先で地面を蹴るような動きの方が多く使われるようになり、
そのうちに、そのような動きがほぼ反射的に起こるようになっていきます。
乗馬の初心者の方のレッスンなどを見ていると、
鐙に踏ん張ろうとして足先で鐙を蹴ってしまうことで、
踵や膝が浮いて不安定になったり、腰を前に随伴させる動きにブレーキがかかって馬の動きに遅れ、拳が上がって手綱を引っ張ってしまっている様子が、ほぼ全員の方に見られます。
このような 「 爪先立ち」の症状を直すためのアドバイスとして、
「踵を下げて」ということもよく言われるものですが、
力を入れて踵を踏み下げようとすると、足が前に突っ張るような感じになって鐙に重心を載せることが難しくなり、
かといって、足を後ろに持っていくと今度は踵が浮いてしまう、というようなジレンマに悩んでいる、
というような方も少なくないのではないかと思います。
踵が浮いてしまう、という症状を直すためには、
無意識のうちに足先で鐙を蹴ってしまう、という「反射運動」を禁止し、
「足先で地面を蹴らずに動く」という新しい動き方を、身体に落とし込んでやる必要があります。
そのための稽古法として有効だと考えられるのが、『牧神の蹄』を使ったトレーニングです。
牧神の蹄の側面を足指で掴むようにしながら立つことで、自然に足首が屈曲して脛の骨が前傾し、
足のMP関節辺りに重心を載せた「動き出しやすい立ち方」になり、
足を踏ん張らなくても、重心移動のエネルギーを利用して楽に動くことが出来るようになります。
そうして、足趾と足首を屈曲させたまま、軽くスクワットのように膝を屈伸させてみれば、鐙を蹴らずに腰を随伴させる感覚をつかむことことが出来るでしょう。
前述した赤ちゃんの掌握反射では、足趾と同時に、足首も屈曲することが知られています。
足首がピンと伸びて踵が上がってしまうのがどうしても直せない、という方は、
牧神の蹄のように、鐙を「掴む」ようなつもりで足の指を屈曲させてみる、
というのもあるいは有効かもしれません。