ジョッキー武豊監修・国産鐙(あぶみ)プロジェクト | 馬術稽古研究会

馬術稽古研究会

従来の競技馬術にとらわれない、オルタナティブな乗馬の楽しみ方として、身体の動きそのものに着目した「馬術の稽古法」を研究しています。

ご意見ご要望、御質問など、コメント大歓迎です。



  最近気になっているものに、

JRAの武豊騎手監修による

「国産レース用鐙(あぶみ)開発プロジェクト」というのがあります。


  乗馬用品の多くがそうであるように、日本国内で手に入る鐙というのは、実はほとんどが海外のメーカーによる製品だったりします。




  最近になって、乗馬用のものでは材質や形状のバリエーションも少しずつ増えてきてはいますが、


競馬用ではまだまだ選択肢は少なく、武豊騎手のような一流のジョッキーでさえ、数少ない海外製の既製品の中から自分の好みになるべく近いものを選んで使っているというのが現状です。


  


例えばプロ野球やプロゴルフの場合、一流選手が市販のバットやクラブをそのまま使うというようなことはほとんどなく、

多くの選手がそれぞれ形状や重さなど細部までこだわったオーダーメイドのモデルを使っていることを考えると、


武豊騎手のような世界的にも有名な一流騎手が、30年もの間、足にタコを作りながら我慢して既製品を使い続けているのは、

プロのアスリートとしては非常に稀だと言えるでしょう。



 とは言え、馬の世界にいる人にとっては「そういうもの」という感じで、

武騎手ご本人ですら、これまではあまり疑問に思ってはいなかったようなのですが、 


武騎手が、たまたまアンバサダー契約を結ぶことになったゴルフ用品メーカー(ゴルフもプロ並みの腕前なのだとか)の工場で、「アイアン」を削り出す工程を見学した際に、

「あれで鐙も作れるのでは?」と記者の方に話したのがきっかけで、


それまで乗馬や馬具については全く知識がなかったメーカーの方が一大決心し、武騎手の監修の下、一からの鐙開発に挑むことになったのだそうです。





【独占密着ドキュメント】武豊が究極のモノづくりを求めて工場へと足を運んだ理由



武豊アブミプロジェクト連載① レジェンドジョッキーが言った「俺に合ったアブミを作りたい」


武豊アブミプロジェクト連載②騎手がこだわる馬具は「オーダーメイドの世界」




   開発プロジェクトのきっかけとなったアイアンの製造工程が、CADプログラム制御によって鉄の塊から製品を削り出すというものだったため、

「武豊スペシャル」鐙も、まずは同じような製造方法で作られましたが、





それでは製造に手間やコストがかかり、一個数万円というような高級品になってしまうため、


全国を転戦し、一日に何レースも騎乗するために鞍が2〜30背も必要になるというジョッキーにとっては現実的でないということで、


一点モノの「武豊スペシャル」以外の量産品では、現在市販されているのと同じ鋳造(型に流しこんで固める方法)を採用することになったようです。


 ただ、鋳物というのは製造過程で内部に気泡による空洞が出来やすく、強度に不安が残ります。


 武騎手の要望に合わせてアーチ部分や踏み板の形状を実現しようとすると重くなり過ぎ、

軽さを重視した素材を用いると強度が足りなくなる、というジレンマで、開発はなかなか困難を極めたようです。



武豊アブミプロジェクト連載③G1レース当日控室で武豊が試したプロトタイプ1号の評価は?


武豊アブミプロジェクト連載④ 困難が待ち受ける製造方法。完成を待ち望む競馬界


武豊アブミプロジェクト連載⑤ トレセンでも話題沸騰! リーディングジョッキーと議論

   

武豊アブミプロジェクト連載⑥弟・武幸四郎が語った「ジョッキーアブミ」と「調教アブミ」の違い



結局、形状にこだわり抜いた『武豊モデル1』として、130gほどのステンレス製と、形状を工夫し耐久性を持たせつつ100gを切るアルミ製の2種類、


また『モデル2』として、「世界最軽量」の鐙の開発を計画中とのことです。


  プロジェクトの今後の展開に注目ですね。^_^


武豊アブミプロジェクト連載⑦ 世界一の軽量アブミを目指し『モデル 2』開発へ着手


武豊アブミプロジェクト連載⑧ 製造過程でトラブル発生も「じゃあ、2パターン作るのはどう?」





 今回開発のモデルはあくまでも競馬のレース用で、一般の乗馬での使用はブーツとの相性などからも難しいかもしれませんが、

例えば小柄な女性とか、ジュニアライダーなどで市販の大きな鐙に違和感を覚えながら我慢しているような方にとっては、選択肢の一つになるのではないかと思います。


  鐙は、乗馬においてもシートや腿・膝のフィット感に負けないくらいに大切な、まさに「バランスの要」ですから、


自分に合った鐙の形状や踏み方にこだわって色々と工夫したりしながらベストなバランスを探ってみるのも、面白いのではないでしょうか。