語りつぐ人々 インドの民話/長弘毅・訳/福音館文庫/2003年
あれこれ いいわけもさまざまです。
三人の男が連れ立って帰る途中、日が暮れて野宿することになり、夕食にキール(乳粥)をつくり、あらそって貪り食いました。それでも多すぎて、残りは明日の朝食べることに。
ひとりの男の提案で、一番すばらしい夢を見た者が食べることに。
一人の男は、どうしてもねむれません。これまで夢をみたことがなかったのです。
夢を見なければキールは食べられません。じっとしておれなくなり、男は残ったキールをのこらず食べてしまいます。
次の朝、自分の見た夢を話し出します。一人は天国に行った夢。もう一人は王さまになった夢。三人目は悪魔とあった夢。そして悪魔から「キールを食え、キールを食うんだ。さもないとお前の命はないぞ」と、驚かされたというのです。そこまで聞くと、ふたりの男は「それでおまえ、キールを食ったのか?」と尋ねます。「食ったよ。食わずにおいてみろ。なにせおれは殺されるところだったんだ」。
ほかの二人が「どうして、おれたちをよばなかったんだ」と責めると、「どうしてよばなかったかだと? よべるわけがないじゃないか! おまえたちは天国にいったり、王さまになっていたじゃないか」と男は こたえます。
キールはお祝いごとやもてなし料理には、欠かせないといいますから、どうしても食べたかったのでしょう。
この三人、まだ旅は続きますから、無事に帰りついたのでしょうか?