どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

イラザーデひめのベール

2020年11月20日 | ファージョン

      年とったばあやのお話かご/ファージョン作品集/エリナ・ファージョン・作 石井桃子・訳/岩波書店/1970年

 

 それはそれは美しかったイラザーデひめ。世界中の女王を全部一つにしたより、もっと美しかったのです。

 世界中のひとが、美しいといううわさをし、鳥はそのことを歌い、空の風はそのことをささやき、海の波は、そのことをつぶやきながら、津々浦々の岸に打ち寄せていたのです。

 ある日、さまざまな国の王や王子が、ひめを花嫁にほしいとやってきましたが、ひめの目が、ある一人の王の上にとまるやいなや、となりの王が、その人を殺しました。ひめがそのひとをすきになるようなことがあってはならないからです。やってきた全員が死んでしまいました。

 こころを悩ました王さまは、ひめの顔をベールでかくしておき、ひめの夫になるひとさえも、それは見ていけないことにきめました。

 こうして、王さまたちが、ひめを花嫁にほしいといってやってきても、だれも、ひめの顔をみることができませんでした。

 やってきた王たちは、ほんとうにひめであるか、わからないと思いはじめました。

 「うつくしいかどうかは、どうしたら、わかるか?」「魔女のようにみにくいかもしれんぞ」

 王さまたちは、次々に去っていきました。ペルシャ王の申し出が世間に知れわたると、だれもひめを妻にほしいといってくるひとはいなくなりました。

 ペルシャの王も女王もなくなり、新しい支配者ができても、イラザーデひめは、ごてんのひめの部屋に住んでいました。あまり美しかったので、ひめは死ぬことができなかったのです。

 ペルシャが滅ぼされたとき、征服者は、すべてのペルシャ人を国の外に追い出しました。この時、イラザーデ姫もでていきました。どこへいったのかは誰も知りません。

 

 美しさの形容詞はさまざま。しかしときには形容されない方が、想像をふくらませてくれるかもしれません。


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