鬼といりまめ/作・谷真介 絵・赤坂三好/佼成出版社/1991年
「節分」の由来の話です。
日照りが続き、田んぼの稲は枯れはじめていました。
「誰でもいいよ 雨を降らせてくれたら、可愛い 一人娘を嫁にやってもいい」と何気なく母親が言った一言を聞きつけたオニに 「村中のどこの 田んぼの稲も みのってな。豊年万作に なるほど たくさん ふって くれたらな」と、母親は答えます。
しばらくして雨がふってきて お百姓さんたちは大喜び。秋になると どこの田んぼの稲も 豊かに実りました。
するとオニが山奥からやってきて、娘をつれていきます。母親はいつか会いに行くときの道しるべになるようにと 菜の花の種を娘にもたせます。娘は、オニにみつからないように菜の花の種を 足元に 落としていきます。
冬になって雪が降ると、オニは朝からお酒ばかり飲んで よっぱらっているばかり。
やがて春になって菜の花が咲くころ、娘はオニのすきを見て母親に会いに逃げ出します。
娘は、道しるべの菜の花をたよりに、暴れ牛のように後を追ってきたオニから逃れ、母親の家にたどりつきます。
母親が戸を閉め切り「酒ばかり飲んでよっぱらっているものに 可愛い娘はやれぬ」というと、オニは「もう、飲まぬ。約束するから 娘を くれろ」と頭を地面にこすりつけながら いいます。
すると、母親は 戸の隙間から煎り豆をなげ、豆を植えて花を咲かせてみろと いいます。
一年たっても 芽は出ません。オニはもう一度 豆をもらいに 娘の家にやってきました。
母親は、また戸の隙間から 煎り豆をなげます。けれども豆は目が出ません。それを繰り返しているうちにオニは 豆を見るのが嫌になり、娘の家にも来なくなりました。
娘の名前は「おふく」。節分に「福」は欠かせません。
煎った豆を一生懸命育てるオニは なにかあわれです。改心して、約束の実行をもとめただけなのに。
東京の絵原村や伊豆につたわるものからの再話とありました。