最後の頼みの綱でもあった『放流タイム』をまさかのお祭り状態でフィナーレを迎えた僕たちは敗北寸前まで追い詰められていました。



追い詰められたミッキーマウスがチシャ猫に噛みついた『窮鼠猫を噛む事件』の再来を彷彿とさせるご状況でした。












wichaの最後のヒットは僕が手を出すとろくなことにならないと思ったので優しく見守ることにしましたが、ショートバイトで直ぐに魚はバレてしまいました。



結局、wichaが3回ヒットして、1匹は釣れたのに僕のランディング・ミスで残念な結果となりました。


そして僕の方は満を持して今回の湯ノ湖に戦いを挑んだものの『ノーバイト・ノーフィッシュ』という完全試合をやらかしてしまいました。


wichaはボートを降りてからもおかっぱりで居残り練習をしていましたが、何をやっても全く答えが得られず、迷走を続けた僕はもうルアーをキャストする気にはとてもなれませんでした。













wichaの釣りを後ろから見守り、キャスト・ミスしてラインが隣の人とクロスしたときだけ隣の人に謝るくらいで、今日の釣れなかった理由をぼんやりと頭の中で考え続けていました。











ルアーのセレクトに間違えはないし、絶対に釣るためにフライを敢えて封印したにも関わらず散々たる結果・・・


夫婦でボートからフライを投げている夫も妻も魚を釣っていたし、6人ファミリーで釣りをしているボートでも魚を手にして家族で喜びを分かち合っていたし、放流場所の直ぐ近くで釣りをしていた5歳くらいの小さなお子さんまでもが釣れているのです。


ニジマスを入れた魚籠を手に持つお父さんが意気揚々と子供達を引き連れて、僕たちヘタッピーの真横を素通りして行きました。




この日は昨日無料にしてくれた奥日光高原ホテルには行かずに、まだ行ったことの無い別の旅館のお風呂を利用することにしました。












今日やるべきことは全てやったと思えるし、考えられる全てのことを試して、トライ&エラーを繰り返して答えを探しました。


釣れなくて何時間もの辛い時間を腐らずに丁寧に、絶対に答えを探してやろうとキャストし続けました。


けれども2日間釣りをして、初日は4時間、今日は8時間以上釣り続けてノーバイト・ノーフィッシュという結果だけが残りました。












よくよく考えると今年は全然魚を釣ってないし、全体的に実力不足が否めないところなので仕方がありません。



もっと練習をして、釣りが上手くなりたいと思うところですが、結局僕なんて人から妬まれる美貌があるだけのセクシーだけしか取り柄が無い不器用な男なのです。



次回はもっとイージーな釣り、心が癒されるトレンディな釣りがしたい思う今日この頃なのであります。














けれども折角、wichaがヒットさせたお魚をランディング・ミスして夕飯のおかずにならなかったことは悔やまれるところです。



昼もカップ麺だし、夜は白米と棒ラーメンのみという悲しい内容・・・














自分を律する為に、時にサバイバルというものは己の空腹と戦わなければならないのであります。













本来ならば連れてきた息子をきちんとサポートして、楽しい思い出作りをしなければならないところですが全くもって情けないものです。



2日目の夜は気分も落ち込みビールも程ほどに眠りにつきました。


考えても仕方がないことは考えない方が良し、答えの出ない問いに答えられないことは、そもそもの問い自体が無意味なのです。



この日は早く寝て次の日は釣りのことは忘却の彼方へ、朝から純粋に大自然の中でのキャンプを楽しむことにしました。


折角、こんな素晴らしい景色のある場所に来たのです。



美味しいコーヒーを淹れて香りとコクを楽しみ、ゆっくりと朝食を作りながらクノールで迎える新しい朝を満喫しました。









やはりアウトドアで食べるヤマザキの『大地と緑のロールパン』は最高です。


湯元キャンプ場の運営会社の株を40%ほど取得して、名前を『大地と緑の山崎キャンプ場』に改名してやりたい衝動に駆られたのは言うまでもありません。


それからwichaを起こしてご飯を食べさせてから、今日の予定をこなす為にふたりで奥日光湯元温泉郷へ散歩に出掛けました。















大通りを抜けて、左手に苔むした森を眺めながら灯籠の続く参道を歩きました。


ひんやりとした森からの風が気持ち良く、砂利を踏む足音も何処と無く韻を踏んでいるようにさえ思えました。














奥へ進むと最奥にひっそりと佇む古い一軒のお寺が厳かに鎮座していました。













とうやらこちらがお寺に温泉があり、神聖な温泉で身を清めることのできる日本で唯一無二の名湯、『温泉寺』のようです。




早速中へ入ろうとしますが、入口には僕たち礼儀を知らない凡人に対して有り難い注意書が・・・



僕は江戸時代の御札を前にする庶民たちのように、その有り難い『注意書』を辞書で調べ、書かれている作法通りに手順を踏みました。



少し緊張しているのをwichaに悟られないように待っていると、答え合わせを終えるタイミングで中からひとりの女性が現れました。


温泉寺の女性は如何にも温泉寺らしい微笑みを湯舟に浮かべて僕たちに挨拶をしました。


それから困惑している僕に温泉寺の拝観には『拝観料』が必要なことを伝えて、それに応じると僕らを『薬師湯』へと導きました。











神聖な『薬師湯』で薬湯治療を施し、今回の2日間の散々たる釣りの厄払いをしました。


温泉寺に相応しい温度のお湯で、物凄く熱く普通の人ではまともに入れない熱さでした。


熱さに強いwichaは2日間の天候で日焼けしていて全く入れず温泉をあとにしましたし、他の大人も入るまでに一定の準備を伴いました。












僕は熱すぎるくらいがちょうど良いと思いながら座禅を組みながら修行僧のように長湯をして、それからそよ風の気持ちの良い温泉寺の居間で品の良い緑茶と御茶請けを嗜みました。




温泉から上がった人達に自分達のお茶と御茶請けが分かるように、お盆には温泉寺の立派な『御朱印』が乗せられていました。




僕は『御朱印帳』を持ってこなかったことをとても後悔しました。






それからwichaとふたりでお茶請けのお菓子を食べながら、金賞を受賞しているお菓子の味や食感、それから作り手の想いなどについて語り合いました。



すっかりお寺で清められた僕は清々しい気持ちで温泉寺を後にしました。


近くにある無料足湯広場や源泉などを見学して、お寺で清められた僕は聖母のような眼差しでwichaに言い聞かせました。













「駄目ですよ?」



「これは幼児用のブランコですからね?」











そんなものはお構い無しに力いっぱいブランコを漕ぐwichaなのであります。






to be continued・・・