「お疲れ様です。〇〇ですが、直ぐにワンクリック証券の犬神さんの所へマタタビ200ブラーを送ってください。」
「えっ?200ブラーもですか?凄いブラーじゃないですか?まさかブラックブラーじゃないですよね?」
「いやいや、ちゃんとした天使のブラーですよ?ちょっとしたテクを使ってね?それより今日の黒猫便に載せられるか確認をお願いできるかな?」
「はい!200ブラーだなんて、〇〇さん最近どうしちゃったんですか?」
「なんか庶務2の皆が〇〇さんの肉球の噂してるの私、猫耳を立てて聞いちゃいましたよ?」
「アハハハァ〜!そんなのただの噂ですよ?ではワンクリック証券の件、頼みましたね?」
僕は内線を切るとまた目の前の書類の山を愚直なまでに処理していきました。
肉球ペッタン♪ ペッタンコ♪
ペッタン ペッタン ペッタンコ🐾
午後からはいつもの退屈な定例会議だ。
「最近、我社の主力商品『猫の手』の売上が落ち込んでおる!誰かこの危機を救える意見のある者はおらんか?」
裸一貫の捨て猫状態から家猫、家猫からリッチなモンプチにまで成功を遂げた通称『シャム猫』の猫頭社長の怒号から会議はスタートしました。
いつものお決まりのパターンだ。
「社長、このキキを乗り越える為にはジジ問題でもある『お婆ちゃんのニシンのパイ事件』を解決しなければなりませんぞ?」
また社長の気を引く、いつもの磯野専務の『かつお節』が始まったぞ?
「そもそも『グーチョキパン店』のお園さんの後出しジャンケン問題だって、我社の『猫の手』の売上を圧迫しているんじゃないのか?」
直ぐに粋の良い穴子常務も磯野専務の意見に噛みつきました。
「最初から私は『トンボ』って男の子の名前はどうかと思っていたんだ!!」
そんな専務と常務との遣り取りに横槍を刺したのは、監査役の伊佐坂先生でした。
「先生、それは男の子の渾名ですよ?コポリっていう名前がちゃんとあります。」
人事部の伊倉部長が直ぐに食らいつきました。
このように会議では猫達が餌場で遠吠えを上げるような激論が繰り広げられました。
「おい!〇〇君、さっきから猫が日向ぼっこでもするようにぼ〜っとしてないで、何か意見は無いのか?」
突然の猫頭社長からのキラーパスが僕の方へやってきたので、僕は猫パンチで投げられたボールを弾き返すように話し始めました。
「はい、私が思いますに『お婆ちゃんのニシンのパイ事件』は率直なお客様からの意見として、我々は真摯に受け止めるべきかと思います。」
「そしてその意見は直ぐに作り主に伝えられるべき事柄なのです。」
「我々の主力商品でもある『猫の手』は今まで猫の手も借りたい人々のニーズに応えてきたと我々は自負してきました。」
「だからこそ!今、我々に必要なのは『猫耳カスタマーセンター』に寄せられているお客様からの意見を『猫の手』に活かすべきなのです。」
僕はそういうと準備したスライドを投影し始めました。
僕がレーザーポインターで統計データを指し示しながら説明を始めると、会議室の皆は食い入るようにスライドを眺め始めました。
けれどもよく見るとそこにいる会議室の皆は資料の統計データではなく、目まぐるしく動くレーザーポインターを猫のように目で追っているだけでした。
「つまり、結論として全てのステークホルダーの意見を反映して、『猫の手』の肉球を20%増量してみるべきかと考えている次第であります。」
僕は徹夜のナイトブラで考え抜いた持論を展開しました。
「おい!〇〇君、それで費用はどのくらいかかるんだね?」
「はい!肉球部分の材料費が20%増量するのと金型から見直さなければなりませんから概算で3000万程かと・・・」
「おい!ノリスケ、予算枠はどうだ?」
「はい!社長、お任せあれェ〜♪」
『勘定奉行』と呼ばれて久しい財務部の波野部長のノリノリの『ノリスケ節』もまだまだ健在だ!
こうして定例会議は僕の『アビシニ案』が採択されることとなり、手に汗握る白熱した『肉球の議論』は幕を閉じたのであります。
僕はこれからが本当に忙しくなると思いました。それからプリマ・L・アルテーシアを完璧な状態でお迎えしなければならないと本気で決意するのでした。
このように猫の飼い主になるのは
本当に大変なのであります。
GETするにゃん(ΦωΦ)?
おしまい🐾