太占の法

令亀の法

 

其俗擧事行來有所云爲、輒灼骨而卜以占吉凶。

先告所卜、其辭如令龜法、視火坼占兆。

其會同坐起、父子男女無別、人性嗜酒。

(裴松之)注…魏略曰 其俗不知正歳四節 但計春耕秋収 為年紀

見大人所敬、但搏手以當跪拜。

其人壽考、或百年、或八九十年。

其俗國大人皆四五婦、下戸或二三婦。

婦人不淫、不妒忌、不盜竊、少諍訟。

其犯法、輕者沒其妻子、重者滅其門戸及宗族。

尊卑各有差序、足相臣服。

 

(書き下し文)

 

其の俗(ぞく)に挙時行来(きょじこうらい)し、云爲(うんい)の有る所、

輒(たちまち)骨を焼き、而(しか)して朴(ぼく)を以て吉凶(きっちょう)を占う。

先ずは卜(うらな)う所を告げ、其の辞(じ)は令亀(れいき)の法の如く、

火坼(かたく=骨のひび割れ)を視て兆しを占う。

 

其の会同で坐起するに父子男女の別無し。

人の性酒を嗜(たしな)む。

(裴松之)注…魏略に曰く、

其の俗正歳四節を知らず、但に春耕秋収を計って年紀と為す。

大人を敬する所を見るに、只手を博するを以て、跪拝(きはい)に宛てる。

 

其の人の壽(じゅ)を考えるに、或は百年、或は八九十年。

其の俗、國の大人は皆四五婦有り、下戸でも或は二三婦有り。

婦人は淫(いん)せず、妬(と)せず、盗まず、訴訟少なし。

其の法を犯すに、輕き者は其の妻子を没し、重き者は其の門戸及び宗族を滅ぼす。

尊卑により各(おのおの)差序有るも、相いに臣しており、服するに足る。

 

 

(現代語訳)

 

倭人の俗に、何か事ある毎に問題が有れば、

直ぐさま(鹿など動物の)骨を焼いて朴を為し、それにより吉凶を占う(太占の法)。

先ずは占うことは何かを告げ、

其の辞は(中国の亀の甲を焼いて行う)令亀の法の如く、

骨の焼けて割れた裂け目を視て兆しを占う。

寄り合いにおいて座に就くには父子男女の分け隔てなし。

その人の性は酒を嗜む(好んで飲む)。

大人が敬意を表わす時は、ただ手を叩くことで丁寧な礼に相当する。

 

(裴松之)の注に有るが、魏略曰く、倭人は正しい歳と四季を知らず、

但に春の耕作と秋の収穫の時期を計って一年と為す。

つまり、夏が一年冬が一年と数えて、一年が二年となる。

 

倭人の寿命を鑑みるに、百年生きる人もあるが、多くは八、九十年である。

(古代には病院もなかったが、自然と共に生きる倭人の寿命は実際に長かったのだろう。

現代でも特に農村に顕著だが田舎に行くと病院にも掛からず長生きしてる老人が多い。)

倭人の風俗に国の大人は皆四、五人の妻があり、庶民でも二、三人妻を持つ者あり。

(倭国の一夫多妻制は、倭国大乱の後で男性が少なく、女性が多かったせいだろう。)

婦人は不倫せず、嫉妬せず、窃盗もしないので訴訟は少ない。

倭人が法を犯すと、軽い場合はその妻子を召上げて生口と為すが、

重い場合はその家族及び親戚一同を全員処刑してしまう。

(これも神仙思想だが、現実に訴訟は少ないが、仮に罪を犯すと妻が没収され奴隷とされ、

重い罪では一族郎党が全員抹殺されると語られる。即ち、男尊女卑の世界だったらしい。

尊卑により各々に差を付けているが、互いに信頼しているので秩序が保たれている。

(最後に又、倭国の神仙思想が語られているようだ。)

 

 

 

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