こんばんは!
芥川賞候補作を(一応)読み切ったので、
つづいて直木賞候補作を読みま〜す!
一作目は
馳星周さんの『少年と犬』(文藝春秋)。
タイトルや装丁を見ての通り、
この物語には一匹のお利口なわんこが登場します。
わんこの名前は「多聞(たもん)」。
多聞はシェパードと和犬の血が混じったと思われる迷い犬で、
東日本大震災で飼い主を亡くし、さまよっていたところにある男に拾われたのでした。
この物語は、
「男と犬」「泥棒と犬」「夫婦と犬」「娼婦と犬」「老人と犬」「少年と犬」
の6章立てで物語が進みます。
多聞は仙台である男に拾われたのちに、
ある男からある泥棒へ、
ある泥棒からある夫婦へ、
ある夫婦からある娼婦へ、
ある娼婦からある老人へ、
ある老人からある少年へと
バトンリレーのように、拾い主が移り変わるのです。
多聞はそれぞれの拾い主から、意志の強い瞳を持った聡明なわんことして彼らに慕われます。
彼らにお世話になっている間は、危険をいち早く察知したり、疲労困憊のときには寄り添ったりして、彼らの「守り神」として多聞は活躍するのです。
それぞれの拾い主にはひとつの共通点があります。
それは彼らが「孤独」を抱えている、ということです。
「男」は震災がきっかけで家族に言えない怪しい仕事に手を付けるようになり、
「泥棒」は遠く離れた家族を思いながら日本で盗みをはたらき、
「夫婦」はいつのまにか冷え切ってしまった二人の関係にお互い頭を悩ませ、
「娼婦」は裏切られた恋人への思いをひとり抱え、
「老人」は妻に先立たれひとり家で晩年を過ごし、
「少年」は震災のショックでしゃべることができなくなり、心をずっと閉ざしていました。
多聞は彼らが抱える悩みや問題にそっと寄り添い、彼らを癒し、ときには励ますようなそぶりを見せ、彼らの心を和やかにさせるのです…。
多聞は拾い主が変わるごとにかなりの距離を移動していきます。
仙台からはじまり、新潟、富山、滋賀、島根とどんどん南下していき、
最終的には「少年」の住む九州・熊本へたどり着くのです。
そして熊本が多聞の「目的地」であることが、物語の最後で明かされます。
物語のタイトルがなぜ「少年と犬」なのか、多聞の行動の数々の伏線も回収され、心温まる人間ドラマと、多聞の聡明さが際立つ形で物語は幕を閉じるのです…。
たぶん、この物語、わんこを飼っている人や犬好きの人にはたまらない物語なんじゃないでしょうか…。
帯に書かれた「人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物」という名文も作中の一節を抜き出したもので、この物語全体を通して「わんこ愛」をひしひしと感じられる物語になっています。
わたし自身は、幼いころに実家で犬を飼っていたものの、わたしには懐いてくれなかった (自分の態度も悪かったかもしれませんが…) というちょっと切ない思い出があり、「わんこ愛」は「普通」という感じなのですが笑、
この物語で多聞に心ほぐされてゆく人々の姿にちょっとうらやましさを覚えつつ笑、わんこが多くの人を惹きつける理由がなんとなくわかったような気がしました。
また、この物語はただの「賢いわんこ物語」ではなく、全国各地にいる「孤独」な人の物語にフォーカスし、彼らそれぞれの「傷」を描き出しているところも見どころがあります。
2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震とからめ、心を閉ざし、追い詰められてしまった人々の感情の揺れ動きを微細に描き、そこに寄り添うわんこの姿にグッとくるものがありました…。
どうしてなのかは言えないけれど、
わんこには、人々の心をほぐし、救ってくれる一面がある。
そう納得させられた一冊でした。
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