国益とは何か?日米FTA・日欧EPA【再掲】 | 反新自由主義・反グローバリズム コテヤン基地

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自民党会議、日米FTAに懸念噴出 安倍晋三首相「国益にならないなら進めないのは明確」(産経)

 

二日酔い。再掲。

さて、アメリカから帰ってきた安倍総理ですが自民党内からも「日米FTAでTPP以上の市場開放を押し付けられるのではないか?」との懸念が続出しているということです。

『14日の党会議では「FTA交渉は賢明でない」と懸念が噴出。「日本が今まで以上に米側の要求をのまされるのではないか」と危機感を募らせる意見も出た。』

 

・・・・自民党議員もTPPが「アメリカの要求による市場開放だった」と一応認識してるんですね?なのに昨年末の国会で批准に賛成票を投じたのはなんで?という疑問が出てきます。

さて、この疑問を解き明かすためには「国益とは何か?」を総体的に論じてみないといけません。

 

国益とは読んで字の如くで、日本のためになるかどうか?が判断の分かれ目になるでしょう。しかしながら例えば輸出企業の考える国益と、農林水産業の考える国益は大きくかけ離れています。輸出企業は関税を「国益にそぐわない」と言うでしょうし、農林水産業は関税を守ることが「国益だ」と言うでしょう。

つまり日本という内部に様々なステークホルダーが存在するわけで、国益の定義とは経済視点だけに限るならば「星の数ほど有る」のが実情です。

しかし日本政府及び日本の民主制の大目的が「国民と国土、国家の安全保障と発展」と定義するならば、かなり絞れてくることでしょう。

 

国民と国土の安全保障と発展を願うならば、少なくとも食料について日本国内である一定程度まかなえるのが理想であり、エネルギーについても同様です。

日本国内で自分たちに必要なモノやサービスを生産する供給能力、これこそが国力の源泉であり、これを守ることが安全保障にもつながるでしょう。

であるならば貿易に関しては少なくとも、国内で生産不可能な足りないものを輸入し、その輸入のための外貨を稼ぐ手段として輸出をする、というのが本来の日本の国益に叶うのだろうと思います。

 

もう1つ、軍事的な安全保障面を考えてみますと、どうも安倍政権および自民党は「軍事的な安全保障が最優先」と考えて、国民生活や軍事を支える経済を軽視し、バーター的に考えているんじゃないでしょうか?

つまり経済的な朝貢をアメリカ様にする代わりに、軍事的な安全保障を得るということを考えているように見えます。

『14日の党会議では「FTA交渉は賢明でない」と懸念が噴出。「日本が今まで以上に米側の要求をのまされるのではないか」と危機感を募らせる意見も出た。』

 

上記なんかは正にその証左のように見えます。

しかしここに一つのパラドックスが存在するのは、誰もが認めることでしょう。経済的な朝貢と疲弊こそが、日本の防衛費の停滞につながっているという「厳然たる事実」です。

中国を見ればGDP比2%程度の軍事費にも関わらず、軍事が急成長したのは経済成長があったからこそであると断言できます。

逆説的にアメリカに軍事を依存し続ける限り、アメリカへの朝貢は続き、日本経済が復活することはなく、従ってさらに依存度を強めるという循環になることになります。

 

さて、懸念されている日米FTAですが、少し日欧EPAとの構造的な違いについて触れておきましょう。

上記で述べたように日米の間には「軍事的依存」という構造が存在します。であれば日本がアメリカに対して強気で交渉をするのは「不可能」なわけです。

逆に日欧の間にはそのような依存関係は存在しないため、日欧EPAに関してあまり騒がれない、というわけでしょう。

※日欧EPAの中身が出てきてないためでもありますが(汗)

またEUは現在各国の利害関係が遠心力として働いており、さほど強い要求が来ないだろうということも想定されます。要するに一致団結しているわけじゃないという話です。

 

さて、日本が懸念しなければならないのは日欧EPAより、日米FTAであると思います。

※もちろん日欧EPAも結ばないに越したことはないのですが。いらんし。

日本としてはTPPがおじゃんになった今、日米FTAというガチバトルの交渉につくことはなんとしても避けねばなりません。

何故ならば自由貿易とは本質的に、当該国の供給能力を特定産業に特化させていく働きを持つからです。

要するに輸出で儲かる産業が伸びて、国民へのモノやサービスといった供給能力が無視されるわけで、これは安全保障面では脆弱化と言えます。

安全保障(食、エネルギー、軍事、インフラ、水等々)こそが「国民共通の国益である」と定義した場合、これは非常にマズい話です。

 

安全保障とはバーターしていいものではありません。軍事的安全保障を保証してもらう代わりに、水を全て差し出すようなバカはいないでしょう?「全ての安全保障」が国民にとって必要なのです。

であるならば軍事ではアメリカ依存を少しでも減らすべく方向転換し、国内のインフラやエネルギー研究、基礎研究などに予算を振り向け、農業に対しては食の安全保障という大義で補助金を「少なくとも他の先進国並み」に支給し守らなければなりません。

 

安倍支持者は「軍事でアメリカ抜きでは考えられないんだから、経済面での譲歩はやむを得ない!」などと言うでしょうが、自宅の警備をセコムに頼んで、水や食料を買う分の給料がなくなってもいいんだ!!と言っているのと一緒です。

安全保障とは「日本国民が自立し豊かに生きられる保障」でもあります。

そしてその安全保障政策を支えるのは「国家主権」であり、この国家主権を縛る「自由貿易協定」なんぞ百害あって一利なしです。

 

冒頭の記事の安倍総理の言葉の引用です。

『首相は14日の衆院予算委員会で、「FTAを恐れているわけではない。国益になるならいいが、ならないなら進めないのは明確だ」と言及した。』

 

国益の定義すら出来なくてTPPを進めた総理が、今さら国益を強調するなんぞ悲劇を通り越して喜劇です。

「FTAを恐れているわけではない」

 

そんな抽象的な言葉で、勇ましく言ったところで「現実はなにも変わりはしない」。虚しく響くだけに聞こえます。

 

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