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読書「北朝鮮外交秘録」太永浩(テ・ヨンホ)著

2020-04-06 17:02:41 | 読書
 北朝鮮の元外交官太永浩は、1962年生まれというから今年で58歳。脱北したのは2016年、長男に帰国命令が出たことから韓国に亡命する。

 亡命した最大の理由は、子供の教育の問題だという。わたしから見ればすぐにうなずけないが、北朝鮮には未来がないと思う人、特に若い人に多い事情があるらしい。それでも納得するのは難しい。本心が別のところにある気がしてならない。

 北朝鮮が国際的に存在するための欺瞞に満ちた戦略を駆使することを明らかにしていて、これはロシアや中国という共産主義国家の共通点なのだろう。決して信じてはならない国、北朝鮮であり、共産主義国家なのだ。

 この本で一番知りたかったのは、日本人拉致問題だ。残念ながら日本語版への序文で「北朝鮮が日本人を拉致したという事実を知らない外交官はいない。だが、拉致された日本人が北朝鮮でどんな人生を送っているのか、生存者がどれくらいいるかは、だれも知らない。金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)政権下では、拉致被害者の居場所は極秘事項とされ、北朝鮮社会から徹底的に隔離されていたからだ」

 2002年9月17日、日朝平壌宣言を発表した。当時の小泉純一郎首相は、安倍晋三内閣官房副長官を伴って金正日と会談。日本側の強硬な交渉手段で金正日が「私も最近知った。今後はこういうことはないだろう」と事実上認め謝罪したとこの本ではなっている。

 ウィキペディアによると「特殊機関の一部が妄動主義・英雄主義に走って日本人を拉致した」となっている。当時のメディアは、こちらの方を報道していた記憶がある。しかし、どちらにしても嘘の発言であることは、この本で明らか。

 しかも、横田めぐみさんの偽遺骨問題で100億ドル(約1兆1千億円)の経済協力も消えてしまった。北朝鮮側は、この100億ドルで道路や鉄道という基本インフラをすべて現代化できると期待していたのに。

 金王朝の元首、金正恩(キム・ジョンウン)は、かなり非情な男。祖父や父親から引き継ぐ血統なのだろう。義叔父の張成沢(チャン・ソンテク)を罪をでっちあげて殺したり、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)をマレーシアで暗殺したりした。その金正恩も体を壊して危ないとか、妹の金与正(キム・ヨジョン)が実権を握ったとか、世情はかまびすしい。

 いずれにしても、核を放棄することはないし、拉致被害者返還もどうなるか分からない。そんな中で著者は、南北統一に情熱を燃やしている。

 そして不思議に思うのは、北朝鮮の恥部をさらけ出した本を書いた元外交官が無事であることだ。巧妙に日本人を拉致した工作員が居るというのに。何故だろう???

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