[2020年] 研修医が絶対に勉強/読むべきおススメの教科書 [総論/一般]

国家試験に合格し、研修が始まる前に教科書をそろえようと思ってこのページを読んでいるあなたはとても良い医師になると思います。

研修が始まってしばらくして、そろそろ勉強しなきゃな、と思ってみている方もまだ十分に間に合います。

研修医の時こそ教科書や本をたくさん読むべきです。逆に言うと、入局して2-3年もすると教科書の知識なんて持っているのが前提となり教科書に載っていない論文の話ばかりになるので大本となる知識を身に着けられるのは研修医~入局2年目くらいまでになります。

実臨床で必要な知識と指導医が教えてくれる知識には隔たりがあります。指導医の立場からするとまずは担当の患者さんの治療が最優先で、あくまで指示>>指導になります。所謂「(仕事が)できる研修医」はその指導医の指示を早く正確に終わらせますが、この方法だと今までに経験したケースだけしか対処できません。実際に私も研修医の最初の方は耳学問がメインでしたが指導医の言ったことはこなしていたのでできる研修医と言われていました。しかし、研修医1年目の後半に地方の市中病院ではじめて「主治医」になったときは何をしたらよいかわからず、教科書の重要性を痛感しました。なにも市中病院がよいと言っているわけではありません。研修医も指導医も、地方の市中病院も都会の大学病院も経験してきた立場からすると提供している医療の質や先進性では圧倒的に大学病院の方が優れていますが、若い医師が経験を積むという面では市中病院の方が優れています。大事なのはよく学び、自ら考えるということだと思います。初期臨床研修医中に200冊程度の教科書を読んだので、その中でもお勧めできる教科書をピックアップしました。ぜひ、しっかり勉強して「仕事ができる研修医」ではなく「良き臨床医」になってほしいと思います。

・初めに読むべき本

表紙とタイトルで最初は敬遠してましたが実際に読んでみると本当にためになる!
確かに研修医になったら必ず読んだ方が良いと思います。
研修を開始するにあたっての心構えや
プレゼンテーションの技法・抗菌薬など基礎的な知識が記載されています。
「国家試験が終わって研修医になるまでにどれか1冊」と言ったらこれがオススメ。

・研修医が押さえておくべき手技

羊土社からもう一冊。2017年に発売されました。
余裕があれば国家試験が終わって、研修医になるまでに読んでおくと良いです。研修医が始まってからは習うより慣れろです。大抵の手技は2-3回やればできるようになります。しかし、最初の2-3回が本当にしんどい。スタートダッシュで差をつけたいあなたに。

 ・病棟管理

研修医のほとんどが読んでいるのではないかという本です。
輸液から発熱時の対応、呼吸器管理まで全体的に広く浅くレジデント必須知識が記載してあります。2年目の研修医にはちょっと物足りないですが1年目の時点でこの本の内容が大体頭に入っていたらデキレジだと思います。どちらかは必ず読んだ方が良いと思います。内科レジデントの鉄則は2018年に第3版が、入院患者管理パーフェクトは2017年にver2が出版されました。どちらか一方を選ぶなら内科レジデントの鉄則がオススメですが、どちらも名著なのでできれば両方とも揃えておきたい。

デキレジやヤバレジはあくまで読み物です。時間とお金に余裕があれば読んでもよいですが、そんなにお勧めはしません。

・マニュアル系

結局は内容の薄いマニュアル本なのでここら辺はどれもそんなに変わりません。確かに一年目の研修医には絶対に1冊は必要なのですが、通読するようなものでもないのでどれか1冊持っていれば良いと思います。意識高い系の研修医はUCSFに学ぶ…を選びがちですがマニュアル本でマウントを取るのはやめましょう。

・抗菌薬

これは鉄板ですね。まず、抗菌薬初めの一歩で全体像を理解し岩田先生の本で理解を深めます。実臨床で1冊持っておくべきは感染症プラチナマニュアルですね。改定を重ねかなり使いやすく、病棟に持ち歩くならこちらがオススメです。
青木先生の「レジデントのための感染症マニュアル」および「サンフォード」良いのですが必須ではないと思います。「レジデントのための感染症マニュアル」に関しては良い本ですがオーバースペックなので、上記の3冊以上に知識を深めたい場合には有用です。サンフォードは感染症専門の先生からは勧められますが、容量も海外使用でレジデントが使用するには過剰な内容と思います。

・輸液

個人的には鉄則か入院管理パーフェクトで十分だと思いますがまだ不安が残るようなら輸液ができる、好きになる。安定の羊土社です。その後電解質異常とか救急で輸液が必要なら救急・ICUの輸液か、「輸液のコツ」を読めば良いと思います。腎臓内科などでよく勧められるのが「より理解を深める 体液電解質管理」ですが輸液の教科書というより腎臓内科の教科書と考えた方が良いと思います。もちろん良い本なのでできれば読んでおきたいですが、一般的に使用する範囲の輸液であれば読まなくても大丈夫です。

・救急

赤本・青本(ご法度系)は個人的にあんまり好みじゃありません。個人的に救急は習うより慣れる部分が大きいと思うので救急外来に出るなり、その前に不安なら講習に出るのが良いと思います。病棟ではICU実践ハンドブック、救急外来でがER実践ハンドブックは必携です。浅く広く書いてあってこれ1冊持っていれば安心。薬について詳しく知りたければICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2、補助循環(CHDF/PCPS/IABP)に関しては ICU/CCUの急性血液浄化療法の考え方,使い方 がややマニアックですのでDr.正井の なぜなに? がガツンとわかる補助循環 (メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ)レジデントのための血液透析患者マネジメント 第2版 がオススメです。人工呼吸器に関しては世界でいちばん愉快に人工呼吸管理がわかる本: ナース・研修医のためで十分でしょう。あとは、病棟で学びましょう。講習系ではJATECACLSがオススメです。JATECは外傷診療の講習ですが救急で必要な知識はかなりの範囲習得できます。やや高いですが、是非。ステップビヨンドレジデント 1 救急診療のキホン編を勧める人もいますが、典型例とは違った見逃してはいけないことを中心に書いてあるので、正直研修医でそこから入るのはあまり意味がないと思います。

・医療統計

論文を読むにあたっての医療統計の基礎に関してかなり基礎の基礎の部分から説明してあります。書き方もすごいわかりやすいですし、オススメです。


・画像
 
画像診断の勉強は、とても難しいです。まず、総論的な本が少ないですし、
あったとしても不必要な情報が多すぎます。その中で、一冊だけ選ぶならば「画像診断を学ぼう」が私の知る限りベストだと思います。さらに救急外来で用いるならば救急で役立つ頭部CT, MRIが有用です。最初は辛いですが、これさえ読めれば大体の画像は読めるはずです。あとはよくわかる脳MRI (画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)だったり、胸部のCT 第3版とか腹部のCT 第2版あたりを見ながら読影すれば良いです。

エコーに関しては

腹部エコーと心エコーで1冊ずつ読むようにしましょう。

・内科全般

病棟用と外来用に1冊ずつです。ジェネラリストのための内科診断リファレンス: エビデンスに基づく究極の診断学をめざしては検査の感度や特異度などのevidenceが載っていて、診断や治療を進めていく上での根拠になります。内科外来マニュアルは2017年に第2版が出版されました。外来には持っておきたい1冊です。



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