読書感想文:渡辺悦和『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!? 専守防衛が日本を滅ぼす』 | 倉山塾東北支部ブログ

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渡辺悦和『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!? 専守防衛が日本を滅ぼす』(扶桑社新書 2020年)読了。

 

本書は、アメリカのシンクタンク・戦略予算評価センター(CSBA)上席研究員のトシ・ヨシハラ氏のレポート「龍と太陽」の内容がベースとなっている。

 

その主張は、「海上自衛隊の戦力は既に中国海軍に凌駕されている。このままでは、海自は中国海軍との戦力差を二度と埋められないほど引き離される。だから、今すぐ手を打たなければならない。」というものだ。

 

著者の渡部元陸将は、多くの点で同意できるが、自衛隊と人民解放軍の能力を比較する場合には、「龍と太陽」で指摘されている内容だけでは不十分で公平を欠く、という。

 

すなわち、海だけではなく陸・空・核・宇宙・サイバー・AIなど、他の分野ではどうなのか、中国海軍に対して甘く、海自に対して厳しい評価がなされている傾向がある、在日米軍やアメリカ本国が採るであろう行動の予測が甘い(中国視点で、中国の希望的観測がやや強い側面がある)、などだ。

 

渡部元陸将の指摘は的を射ているが、トシ・ヨシハラ氏が指摘した海自の戦力を含めた日本の防衛体制の問題も極めて重要な論点である。

 

どちらが正しいとか間違っているとかいう問題ではない。

 

我が国最大の脅威である中国への備えがどうなっているか、その実態を明らかにし、「では何をどうしなければならないか、どうしていくべきか」をきちんと考え、行動に移さなければならないことの重要性を訴えている。

 

「日本を守りたい」と思っている志のある人は、読んでおくべき1冊である。

 

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