前回は熱性に偏る飲食物の解説でしたが、ビールやアイス、かき氷等の冷たいものの過剰摂取やそれらを頻繁に摂取する習慣も、やはり胃の腑の「受納」と「腐熟」という働きを低下させ、病気を形成する要因となります。

 

その場合に、胃の腑に関連の深い脾臓の「運化」という働きも同時に低下することで、体の正常な水はけができなくなり、湿痰という余分な水分(毒素)を形成してしまうことも多く見受けられます。

 

体の正常な水はけができなければ、浮腫や下痢、倦怠感を生じたり、胃の腑に関係の深い膝や足くびの関節に水腫や痛みをおこしたりします。

 

また、湿痰が肺臓にこもれば、典型的な気管支喘息の症状を引き起こしたりもします。

 

このように、自分が食べたものの性質や、それらの過剰摂取がどのような結果を引き起こすのかということを、ある程度知識として持っておくということは、食養生を実践していくためのはじめの一歩かと思われます。

 

食べ物の性質以外では、早食いをしたり、食事時間が不規則だったり、夜遅い時間帯(胃の休憩時間)に食べたりすることも、やはり胃の腑に負荷をかけて消化器系の機能を停滞させたり低下させたりする原因になります。

 

もちろん、一日や二日、そんな不摂生をしたからといってどうということはありません。しかし、そのようなちょっとした不摂生の習慣化が、水面下で徐々に臓腑の機能に負担をかけ、ある日突然なんらかの症状を発症してしまうという経過をたどることが一般的なのではないでしょうか。

 

昨日飲み過ぎて今日二日酔いだ…ということなら、原因行為とそれによる結果が生じるまでの期間が短いので反省もしやすいのですが、アレルギー等の慢性的な経過をたどる病の場合、原因行為の積み重ねと悪い結果がおこるまでの期間が非常に長いため、不摂生としての原因行為がなんなのかということが自分では非常にわかりづらいのです。

 

それゆえ、まずは自分の生活スタイルを振り返り、食養生の面に関しては、飲食物の内容、量、時間帯、食べ方等をチェックしてみることによって、自分がどんな不摂生をしているかを自分自身で認識してみることがまずは大切になります。

 

もし自分で改善すべきところを認識できれば、少しずつでかまいませんので、それを改善していく努力を習慣化していくことです。

 

例えば、早食いを自覚したなら毎日毎食は無理でも、週に数日か、あるいは数回早食いをやめてみるとかです。自分に無理のないやり方で、少しずつ自分の生活スタイルに組み入れていくということですね。

 

ちなみに、私の場合は一口を少なめに食べるということを実践しています。普段、一口でガバッといってしまうところを二口に分けて口に入れるということですね。これは噛む回数を意識したり、腹八分目を守ったりするよりやりやすく継続しやすい方法なので患者さんにも推奨しています。

 

先天的に持って生まれた体質や病気等は仕方ないにしても、後天的に身につけた習慣に関しては、簡単ではなくても多少なりとも修正をかけていくくらいはできるはずです。

 

ということで今回は、アレルギー疾患はもちろん、病気全般に関係の深い食養生の面に関して基本的なことを述べてみました。

 

病気は治療と養生の両輪がそろってはじめて無理なく改善していきます。あまり自分を責め過ぎてもいけませんが、病気になるのはある程度自分にも責任があるのだという因果応報的な考え方も取り入れて、少しずつでも養生を心がけていただければ幸いです。

 


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