先週の土曜は土用の丑の日でした。

 

土用といえばいうまでもなくうなぎの蒲焼ですが、今回は土用について東洋医学の視点から考えてみたいと思います。

 

土用と呼ばれる期間は、春夏秋冬それぞれの季節の変わり目にあたる時期で、体調が崩れやすい時期となっています。

 

その中でも、厳しい暑さが始まる夏の土用は特に重視されていて、今は土用といえば夏の土用を指すようになっているのですね。

 

一年を24の気候の移ろいで区分した「二十四節季」では、夏の土用は小暑から大暑に移行する時期でもあり、一年で一番暑くなる時期になります。

 

「二十四節季」をさらに細かく分けた捉え方に「七十二候」がありますが、このような一年の気候の移ろいを細かく分けて捉えていく考え方は、農事だけではなく医事とも深い関係があるのです。

 

なぜなら、「二十四節季」や「七十二候」等の気候の移ろいは、自然の気の流れを表しており、自然の気の流れは必ず人体の気の流れに影響を及ぼすからですね。

 

それらは、自然の気が正常に流れているかどうかの指標であり、指標通りでない不自然な兆候がある場合は凶兆と捉えます。

 

例えば、「立春」の初侯(最初の五日間)には、東から風が吹いて東の方から雪や氷が溶けてこないといけません。もしこの時期に、西から風が吹いて西の方から雪や氷が溶けてきだしたなら、これは何かよからぬことがあるぞと用心するわけです。

 

つまり、天変地異の前触れであったり、人体にも相応の悪影響が出る前触れを表したりするわけですね。

 

ちなみに、今年の夏の暑さは、地震や豪雨に続く天変地異レベルのものと思われます。

 

そのため最近、体質がもともと内熱傾向の方の多くは、体内の熱邪(余分な熱)が暑気により助長され、持病を悪化させたり、そうでなくても皮膚に湿疹を呈したりする方が急に増えてきたという印象で、治療では熱邪を冷ます処置を加えることが多くなっています。

 

私自身、例年はなんともないのに、今年は最近になって熱に親和性を持ちやすい経絡上に急に湿疹が出たり、小便に熱感を感じたり等、内熱が盛んになってきている症候がちらほら見受けられるので、それ以上の悪化を防ぐために内熱を冷ます漢方薬を飲んでいるくらいです。

 

話がそれましたが、土用の「土」というのは、東洋医学では五臓六腑の「脾臓」と「胃の腑」を表します。

 

脾臓と胃は消化吸収や水分代謝の働きを持つ胃腸を中心とした消化器系統のことで、生命エネルギーである気血を作り出しそれを全身にサラサラと送り届け、また体内の水はけをつかさどる働きそのもののことです。

 

もし、脾臓と胃の働きが低下すると、気血の生成がうまくできなくなります。そのため、エネルギー不足からの倦怠感がおこりやすくなりますが、これが悪化すると夏バテです。

 

ゆえに、夏バテを防ぐためには、エネルギーを生成する働きを低下させないようにすることがまず肝要になってきます。

 

つまり土用には、季節の変わり目(土用)は特に胃腸()を大切にして、健康を損なうことがないようにしましょうという意味があるのですね。

                          つづく


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