これまでの内容を踏まえて夏の養生法を考えると、一般的にはクーラー等で暑気を回避する必要性や体を効率よく冷却する方法等はよく言われていますし、今年のような天変地異レベルの暑気の中ではそれらももちろん大切なことですが、食養生の大切さは水分摂取とうなぎの蒲焼以外はあまり聞かないような気がします。

 

夏にこまめな水分補給をすることは大切なことですが、素体(体の状態・体質)や環境、労働条件等の違いによっては、水分も過剰に摂取すると「脾臓」と「胃の腑」の機能が低下して、エネルギーの生成不足と水分代謝の低下がおこります。

 

つまり、水分摂取したつもりが夏バテを助長することにつながる場合もあるということですね。

 

ご存知のように、身体というのは筒状になっているわけではなく、水分は口から入れたら自然に下から流れ出るというものではありません。

 

口から摂取した水分を代謝させる「脾臓」の働きが低下している人が過剰に水分摂取すると、逆に体内で水分が淀んでしまい、余計に体がだるくなります。

 

その場合は「脾臓」に対する積極的な治療が必要になります。

 

また夏は熱が体内にこもりやすくなりますが、アイスやかき氷、ジュース、ビール等の冷たいものを過剰摂取して胃を集中的に冷やしてしまうと、これも逆に「脾臓」と「胃の腑」の働きを低下させます。

 

冷たいものを摂取すること自体はかまいませんが、摂り過ぎには気をつけましょう。

 

逆に積極的に摂取した方が良い食材としては、きゅうり・トマト・なす・ゴーヤ・冬瓜・すいか等の夏野菜です。

 

夏野菜は身体の余分な熱をさまして尿で排出してくれますので、夏は他の季節に比べて特に旬の野菜を摂取しておくことが望ましいでしょう。

 

それらの養生に加えて、できるだけ腹八分目、よく噛む、食事に時間をかける、食事時間を不規則にしない、夜九時以降は胃を休めることが大切です。

 

特に腹八分目が重要になります。八分目は難しくても九分目くらいには抑えられるように、噛む回数を多くして少しでも食事時間を長めにとってみてください。

 

噛む回数を意識することが難しければ、一口の量を少なくして一回の食事での噛む回数をトータルで増やし、胃への負担を軽減するようにするとよいでしょう。

 

このように、五行の「土」であるところの「脾臓」と「胃の腑」を助けるための夏場の食養生を考えていくと、スタミナをつけるためと称して焼肉、うなぎの蒲焼等のこってりしたものを食べ過ぎないようにした方が「脾臓」と「胃の腑」に負担をかけずにすむということになります。

 

「脾」と「胃」の機能が低下してバテている時はなおさらです。

 

蛋白源が今ほど豊富で満ち足りてなかった昔であればまだしも、現代では栄養が不足するということはほとんどなく、むしろ栄養の過剰摂取によって脾胃を弱らせ病気を生み出している状況です。

 

「夏バテにはスタミナをつけるために焼肉だ!」と思ったりもしますが、現代人の場合は普段からそのようなものを摂取して「脾臓」と「胃の腑」を過剰に働かせていることが多いので、夏の土用だからといって特定の何かを摂取するということではなく、摂取することを全体的に控えることで「脾臓」と「胃の腑」を休ませ、機能の低下や停滞を防ぐことも大切です。

 

いくら高カロリーのものを摂取したとしても、脾と胃がへばっている状態では、そこから有用なエネルギーを取り出せないばかりか、さらに機能に負荷をかけることになってしまいますので注意が必要です。

 

以上、今回は夏の土用から食養生について解説してみましたがいかがでしたでしょうか。

二十四節季ではすでに立秋に入りましたが、残暑はまだまだ続きますので、元気で日々を送れるようできるところから食養生を取り入れていただければ幸いです。

 


東洋医学ランキング