南半球の妹 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

オーストラリアからJがご主人と一緒に日本に遊びに来ました。

 

Jとの出会いはお互いに15歳の時。

高校の留学制度でJが実家にホームステイをして、

その後も学生時代に2回、トータルで2年以上一緒に暮らしました。

嬉しいことに家族ぐるみでのお付き合いがずっと続いて。

私の結婚式では父が親族紹介の時にJを

「血は繋がっていないけれど二人目の娘です」と言って、

花嫁でなくJと父がうるうるしていたり。

Jの結婚式ではサプライズで「私の日本の家族」スピーチがあったり。

私にはできなかった(すごく可愛い)孫たちを抱かせる体験を

両親にされてくれたりもしました、ホントにありがたい。

 

Jと東京で会うのは久しぶり、ご主人のLさんは初めての日本。

常に連絡は取っていても顔を合わせればやっぱりまた違って、

話したいことがたくさん!時間が足りなーい!

「自分でもホストマザーやってみていろいろ分かったことがあるの。

娘がやきもちやくんだよね。

私はおかあさんにべったりだったからかのこに悪いことしたなって」

え?やきもち?考えたこともなかったよ。

それにJはおかあさん大好きだったもんね。

おかあさんもカワイイJに懐かれてもちろん喜んでいたし。

実際外出先で(どう見ても血の繋がりはないので)

『本当の親子みたいですねってよく言われていたじゃない。

多分私よりJの方がおかあさんと相性が良かったんじゃ(笑)。

 

初めての滞在時はJもまだ課外授業で習った日本語しか知らなくて、

それでも向上心の強い彼女は外国語の分からない母に張り付いて

一生懸命言葉を覚えていきました。

言葉遣いを直したり、料理や作法を教えたり、

滞在中にJに一番近かったのは母だったかもしれません。

思春期の時に全く違う言語と文化を教えてくれた親のような人は、

いくつになっても懐かしく大事な存在になるのだろうと思います。

毎日台所の母のそばで料理をしているのを見ながら

「いいにょい(いい匂い)」と言っていたのが懐かしい、可愛かったな。

逆に学校の行き帰りには私にマシンガンのように英語でお喋り。

15歳の女の子がたった一人で見知らぬ国でのホームステイは

相当なストレスやホームシックもあっただろうに。

それでも日本を好きになってくれて、滞在を重ねて、

最終的にJはオーストラリアで日本語の先生になりました。

 

思い出がたくさんある懐かしい場所に行って懐かしい人に会ったり、

Lさんに厳選した初めての東京を案内したり。

一緒に過ごせる時間は楽しくも慌ただしく過ぎて、

ふたりは日本各地を巡る旅に出かけていきました。

別れ際に大きな目に涙をためて

「おとうさんとおかあさんに何かあったらすぐ教えて」と言うJ。

これが最後でもおかしくないと私もイギリスで思ったばかりだったので、

その気持ちはよくわかる。

というか私よりJの方が関りは密接なのでその思いはずっと強いはず。

でもね、ウチの両親は病床に、しかも海を渡って飛んでくるなんて

もったいないし必要ないって言うタイプよ、知ってると思うけど。

それよりチャンスがあれば二人が元気なうちにまたおいで、

と言って今回はお別れしました、次はいつどこで会えるかな。

 

そんなJがオーストラリアに帰ったときは山火事が大変な時期でした。

そもそも水不足や山火事などは多く、自然環境の厳しい国。

でも今シーズンの山火事は期間も例年より長く規模も大きく、

Jの自宅も退避勧告が出る寸前までいきました。

移動のために貴重品を車に積んだと聞いた時は本当にハラハラして、

こちらにも避難できる部屋はあるからねと念を押したほど。

そういえば東日本の震災の時にも同じ申し出を受けました。

お互いに相手のことを案じていても何の役にも立たないのが歯がゆく、

でもお互いに相手の気持ちはとてもありがたいと思いつつ、

だけれども実際にはなかなかそんなわけにもいかなくて。

不安な気持ちを聞いてもらうだけでも少し落ち着いて、

あの時も今回も連絡の頻度は上がりました。

 

リアルタイムで話を聞くと知らなかった驚く事実がたくさんありました。

Lさんが参加している消火活動はざっくり言うとボランティア組織。

山火事の数が多すぎて、正規の消防車を呼んでも来ないのです。

そこを善意の一般人で補うという驚愕のシステム。

彼はおうちに古い給水車を借りてきて直しながら出かけていました。

帰ってくるLさんのお顔はいつも煤だらけ。

言葉も通じない初めての国での長旅から戻った直後にこの重労働は、

本当に大変だったろうとただただ頭の下がる思いです。

 

先週の大雨で大分事態は収束に向かっているようですが、

延焼面積は日本の国土の半分ほどとも、

2000軒以上の住宅が燃えたとも言われています。

消防士さんも含めて亡くなった方も30人ほどいらっしゃるとか。

実際にJのお友達は牧場と自宅が全焼し、

農場を営むJの弟は牧草不足から牛を手放しました。

数え切れないほどの野生動物にも深刻な被害がでています。

恐ろしいのは自然発火だけでなく中には放火もあるということ。

それでも素人考えでは温暖化が頭をよぎるので、

当事者でなくてもちゃんと考えなくてはいけないことだなと思います。

スウェーデンの少女がマスコミにとって便利なのはわかるけれど、

オーストラリアのことももっと取り上げてもいいのにと思ったりも。

でもそうは言っても私自身、

Jがいなかったら知らなかっただろうし自分でも調べなかったはず。

普段から目を開いて耳を澄まして慌てないで落ち着いて、

身の丈にあったできることを少しずつでもしていきたいです。

 


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