猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

ショコラオレンジの夕闇-2

ショコラオレンジの夕闇に

目が慣れると

月と海の間には

なつかしい生き物しかいなかった

 

むかし

猫そっくりだとか

森の奥の三つ目

と呼ばれていた

いわゆる

もどき族である

 

人らのようにすっくと立ち上がり

人らのように言葉を話す

たまに魔法を使い

空が落ちても星が溺れても

決してそこに混ざることはない

不思議でやさしい命たちだ

 

人らのうち

空落ちの予言をしたものたちは

魔法が見えはしたが

魔法を使うことはできなかった

私もその一人であって

無力を噛み締めることは

それなりに

 

ただし

魔法が見えるだけの者が

夕闇に洗われ続けて

無事でいられる確証もなく

なつかしい生き物たちが

月と海の間で

静かに日常を営んでいるのを

見守るしかなかったのである

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