どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設19年目を疾走中。

ポエム248 『秋明菊の花ことば』

2019-10-30 01:45:09 | ポエム
   
     シュウメイギク
    (城跡ほっつき歩記)より
 
 
秋も深まったこの季節に
ポッポと咲きいずる秋明菊
事件の多い年だったから
七歳の少女のようにいたいげだ
 
菊の花には似てないけれど
もらった名前はシュウメイギク
花言葉は「薄れゆく愛」「耐え忍ぶ愛」
少女のはずが艶めかしい
 
行方不明になるなよ秋明菊よ
遥か昔に日本にやってきて
この風土に根付いた帰化植物は
ヒマラヤ辺りから連れてこられたと聞く
 
生まれた国では何と呼ばれていたのか
生んだ母親は元の名を呟くのみ
連れてこられた場所ではキクと呼ぶのだが
忍び泣く声が秋を震わすのだ
 
「つらい」 秋はこんなに辛い季節だったのか
秋明菊の白い花は悲しみの色
ポッポと咲きいずる花はどこか痛々しい
無邪気に帰化して命を長らえてくれ
 
キクとして愛でられていても
お母さんはヒマラヤで待ちつづけている
いつの日か故郷に帰る日が来るだろう
人生は不条理だが見捨てない星もあるのだ
 
地球が創った奇跡のような生命
生命の一つひとつに刻まれたDNA
たとえ帰化してもヒマラヤの記憶は拭えない
希望という星がある限り母の胸に抱かれる日は近い
 
 
 
 
 
 

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