東大数学の壁(2019年東京大学理系数学第5問) | 受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

家庭教師歴約25年。医学部東大など難関大学受験生中心に教えてきました。ちょっとした工夫でケアレスミスを防ぎ実力が点数に反映させる実践的方法や受験生の質問の多かったポイントや過去問などのブログにする予定です。ご連絡あればkatekyo424-public@yahoo.co.jpまで。

東大数学は他の難関校に比べて、少しだけ高い壁があるように思います。難易度というよりも、優秀な受験生が集まる分相対的に壁が高くなる感じでしょうか?
 
 
数学ができるようになる最終段階の流れの一例は
 
「応用できる基礎力が充実してくる」
→「応用問題がそこそこできて勘違いが始まる」
→「自分の発想や論理展開に運の要素があるのに気づく」
→「確実にできるのに必要な要素を考え始める」
→「出題意図を問題文から読み取るのが確実と気づく」
→「それがいかに大変な壁かに気づく」
→「限界を知り、研鑽を積むしかないと諦める」
→「いつのまにかそんなに解けない問題がなくなる」
→「その後処理過程での計算力の大事さを再確認」
→「計算ミスを0にするのは不可能と認識」
→「それがいかに大変な壁かに気づく」
→「限界を知り、研鑽を積むしかないと諦める」
...以下似たようなことを繰り返す
 
といったもの考えられますが、数学がかなりできる受験生でも、この段階のどこかで受験本番を迎えることになるはずです。その上1問の配点が20点であり、不安要素を0にするのが、他教科に比べて圧倒的に難しい(難易度としてではなく、得点の安定させやすさ)のが特色で、逆にいうと小さな運を掴めば、おそろしいくらい点を稼げます。東大数学の壁というのは難易度ではなく、数学の特殊性から長年感じているものです。
 
 
さて、前置きが長くなりすぎました。本年の東大の第5問にいきます。僕はまず↓のように構想を練ってから解き始めました。
 

 
x^nが曲がり方と、常に(1,1)を通ることをベースにしてその極限を考えさせることに出題意図があったと思われます。(3)で(2n-1)乗をn乗にした意図は平均値の定理を使わるためにひねっただけだろうと判断しました(もう少し深い背景があるのかもしれません)。
 
 
あとは、2つの関数の交点の動きを考えながら、グラフ上で(1)(2)は当たり前だなということを考え、(3)もn→∞のときのa,b,cがどうなるかを想像して、そこに寄せるように組み立てればどうにでもなるだろう考えました(←見通しがやや甘い)
 
 
このような「答えの見当がついた状況に寄せて解法を考えた結果解ける数学力」「類題経験のある解法に寄せて処理しているうちに解ける数学力」の違いは、模試や偏差値には現れにくいですが、結構大きいものです。最終的に本番の得点開示で高得点を出すのは、圧倒的に前者の数学力をもつ生徒の方が可能性が高いです。本試験は優秀な教授が作ってる分クオリティーが高い問題揃いだからかもしれません。東大のもつ半歩高い壁の1つに、この前者のレベルの数学力までいかないと得点につながりづらいところがあります。
 
 
この問題を解いているときに実際(3)で「(2)使ってはさみうつんでしょ?」なんて思いながら少し考えて「あれ?パッと浮かばない」となりました。本番でこうなるとおそらく焦ると思いますが、ある程度出題意図が読みとれると、構想を練った段階で予想するのに使った「曲がりがどんどん強くなること」でやってしまい、もし見直し段階で思いついたら修正しようとできます。
 
一例ですが、僕の第一感をなるべく伝わるようにごまかしなく組み立てた略解が↓です。
 
 
(3)のaを出すときに、「(0,0)と(1,1)を通ること」「f’’(x)がnについて単調に増加すること」で、「交点が単調増加」とし、「(2)より上に有界であること」から、極限の存在を示す方針に切り替えました。これは「1以下のある値に収束すること」しか示していないので、「f’(1)→∞であること」「(1)から交点が1つであること」をいえば、「それまでの証明した内容から許されるかなぁ?」と考えた感じです。(本題から外れますが、cでは微分計算を楽にするため、先に逆有理化をはさむように変更しました)
 
 
もちろんこのまま提出するのは最後の手段で、実際は他の問題から戻ってきてちゃんと修正して、多分↘︎な感じで解くほうが無難です。(↙︎は別の問題なのでスルーしてください)
 
 
他の問題でリセットかかって戻ってきたら、「なんでこんなのパッと浮かばなかったんだろう?」と感じたのが正直なところですが、ここからが本題です。半歩上の数学力と書いたのは、こういう想定外の手詰まりに対処できるようになる力のことです。
 
 
本問の場合は「(3)のa以外は確実なので、一度心の余裕をもって他の問題に移れる」ことがでかいです。もし時間があれば、一度他の問題を解きリセットのかかった状態で改めて詰まった場所に戻れます。リセットがかかりうまく切り替えれば解ける可能性もあがりますし、万一浮かばなくても減点を最小限に食い止められます
 
 
「減点を最小限に食い止めれるだろう」と思いながら次の問題へいくのと、「ああほとんどわかってるのに浮かばない。他の受験生できるのかなぁ?」と思いながら次の問題へいくのは、本番の緊張下では特に大きな違いを生むのは、容易に想像できるのではないでしょうか?
 
 
合格は全科目のバランスの方が大事なので、他教科が満遍なく得意であれば、おそらく数学はこのレベルまでいかなくても十分勝負できます。ただ、他教科がやや苦手で理数で東大と勝負するなら、この半歩上の力を目指すと、本当の意味で理数である程度他教科をカバーできると思います^_^
 
 
 

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