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指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

坂東富貴子舞踊公演『狐 葛の葉』

2019年11月08日 | 大衆芸能
国立小劇場で、坂東富貴子舞踊公演『狐 葛の葉』が行われた。
葛の葉は、『しのだづま』で、説教節から浄瑠璃、歌舞伎に取り入れられ、映画でも内田吐夢監督で『恋や恋なすな恋』として作られている。
これが大川橋蔵の安倍保名と嵯峨三智子の葛の葉で、結構面白い作品だった。

安倍清明に命を助けられた信田の狐が女として現れて婚姻し、子までなすが、ある時蘭菊に見惚れていて正体を現してしまい去る。
その時、「恋しくば訪ね来てみよ 和泉なる信太の森の恨み葛の葉」と障子に書く。
これは異類婚姻譚で、そこには被差別の問題が隠れているとの説もあるが、ある種の異なる文化の間で婚姻が行われた時の困難さだと言えるだろう。
吉本隆明風に言えば、「共同幻想」と「対幻想」は本質的に対立するからだとなる。

    

今回の公演も、言うまでもなく、ふじたあさやの『しのだづま考』にヒントを得たもので、演出もふじた氏である。
しかし、坂東富貴子は、そこに昔、彼女が二代目若松若太夫の『葛の葉 子別れの段』を聴いて感動した体験に合わせ、
まず泉州信太山盆踊りから始まり、桂春蝶の語りと三代目若太夫の説教で序段が語られ、そこで坂東富貴子が一人踊る。
狐、保名、葛の葉を前半は素踊りで踊り、後半は女義太夫、さらに最後は故杉本キクの瞽女唄で踊るという大変に贅沢な趣向だった。
あらゆる分野で、女性の力が見直される今日、異類婚姻譚の持つ意味は深く重いと思わされた。
国立小劇場

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