指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『アムステルダム・オリンピック大会』

2019年12月15日 | 映画
1928年にオランダのアムステルダムで行われた第9回オリンピック大会の記録映画、公開に至るまでは複雑な経緯があったようだが、3時間以上の作品となっている。
もちろん、サイレントなので、弁士(佐々木亜希子)と演奏(永田雅代)付。

この間の「オリンピック映画特集」では、ソウル大会、メルボルン大会も見たが、これが一番面白かった。
陸上競技と水泳は、現在とあまり変わらないが、その他は随分違う。
体操の男子では、あん馬、跳馬、吊り輪等があるが、女子は団体演技のみで、集団で動作をするもので、今の新体操のようなもので、平均台等はなし。
当時は、まだ女子が肉体を酷使して運動するということがなかったのだろう。

ボクシングはあるが、レスリング、言うまでもなく柔道もない。
五輪は、本来欧州の貴族のサロンでの社交行事だったので、肉体を他人と合わせるレスリング等はなかったのだろうと思う。
その他、バレーボールのような球技もない。
しっかりとあるのは馬術で、スタンドは満員で一般の人気もあったらしい。
さらに、戦後はアメリカとメダル競争をするソ連の参加もなし。

ここでわかるのは、1928年という欧州の時代性である。第一次大戦から約10年で、一応平和で、ロシア革命もあったが、まだ貴族的階級も存在した時代だった。
そうした前時代的な安定と封建的な文化が見えた。
この翌年の世界恐慌で、世界の平和と安定はなくなってしまうのだから。

日本選手で出てきたのは、マラソンの山田、津田、三段跳びの織田幹男、それに女子800の人見絹枝だけだった。
国立映画アーカイブ
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2 コメント

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ぴくちゃあ通信 (ぴくちゃあ)
2019-12-28 07:44:02
山田兼松が40キロまでトップを走っていたとはびっくり仰天です。しかも山田が4位、津田晴一郎が6位入賞なんて、戦前の日本人選手は国際的にレベルが高かったなあ、と再認識しました。
そうですね (さすらい日乗)
2019-12-29 09:28:16
私も初めて知りました。
こうした積み重ねの上に、ベルリンでの孫選手の金メダルもあったのですね。

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