「正樹おじ、今…ちょっと…時間ある…???」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.076.

ドキドキ 「正樹おじ、今…ちょっと…時間ある…???」
慌てながら健之。

スマホの向こう、正樹の声、
「…ん…???どうした…???」

健之、スマホを左の耳に替えて、右手で押さえるように、
「與門編集長の旦那さんの名前は…???」
夕美子を見て…。

夕美子、緊張した顔をして、
「早瀬。…與門、早瀬。…東京住永証券(とうきょうすみながしょうけん)勤務。」

その名前を聞いて、スマホに健之、
「正樹おじ。與門早瀬さん。東京住永証券勤務。インサイダー取引規制違反で…、まさか…逮捕…???」

その声を聞いて正樹、
「…健之…。おまえ…まさか…???何か…関わって…???」

健之、
「あ~~いや。全く関わっていない。ただ…、俺が勤務している雑誌社の編集長の旦那さん…なんだ。」

正樹、
「何ぃ~~???」



事件の全容は捜査上、教えてもらえなかったが、
現在マスコミまで発表されている内容が、文字通り、
警視庁の捜査二課が動き出したインサイダー取引規制違反で、
ある書類上から與門早瀬の名前が見つかったのだった。

けれども、いきなりどうして、そういう事件に繋がったかと言えば、
前夜の22時に、都内のある住宅でひとりの男性が死亡しているのが、
家族の発見で警察に通報されたのだった。
その男性が東京住永証券グローバル・マーケッツ本部長の嵯峨肇(さがはじめ)である。

死亡した嵯峨の自室にあったパソコンのデータと、
複数の資料の中から発見されたのがインサイダー取引の重要書類。
そして、その書類の中に與門早瀬、その他2名の名前が載ってあったのである。
但し、現在その他2名は海外出張中である。

おそらくマスコミに発表されるのは時間の問題かと思われるが、
嵯峨の死因は青酸中毒。つまりは毒死である。
発見当時の口臭がアーモンド臭だったと言う。

家族にしてみれば、正に青天の霹靂だったと言う。
普段通りに家族と夕食を摂り、その後は普段通りに書斎で読書を楽しんでいたと言う。
ただ、前日に本人の誕生日でもあり、家族同様に知り合いやその他、
勤務先からも様々誕生日プレゼントをもらい喜んでいたと言う。

つまりは、一般的に、普通に生活している人間が、
誕生日の翌日に自殺などするか…。と言うのが警察の見解である。

しかも、被害者本人の口から有り得るはずのないアーモンド臭。
毒物の代名詞的存在の青酸カリである。

警視庁では、捜査一課は他殺の線。
そして二課はインサイダー取引規制違反での捜査を開始したのだった。








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