いきなり流歌も傍に駆けつけて、ティッシュペーパーで…。
流歌、
「あ~~ん、もう…、シミになっちゃうね~~。うん。分かった、後で堤(つつみ)さんに言って、汚れ取ってもらう。」
「すまん、すまん。やれやれ、やっちゃったね~~。」
男性。流歌の前で腰を上げて。
その瞬間、翠、
「あっ。」
流歌もゆっくりと腰を上げて…、
「え~~~~!!!!」
男性、
「えっ…???」
流歌、男性のベルトの上のシャツに指差して…。
男性、顔を落とす。
「あっ。」
流歌、
「も――――――――っ!!!!」
男性、
「ご…め…ん…。」
流歌、
「とにかく、室長っ!!!」
男性、
「あっ。」
さっきから、チラチラと入口の方を見ていた男性。女性に済まなそうにお辞儀をして、
「流歌…、その方…、例の…???」
流歌、
「はい。株式会社アンジェリーナ。ジェシカの逢坂翠さん。」
そして、翠に頭を下げて謝るように、
「ごめんなさいね、初めての方に、こんな…。」
翠、変顔で、にっこりと、
「いいえ…。はははは。」
男性、
「初めまして…。企画開発室長の…寺崎と申します。ごめんなさいね。こんなお恥ずかしいところ、お見せしちゃって…。」
流歌の体を過って、翠の前に。そして右手を差し出す…が…。
「お~~っと、これは、これは、申し訳ない。」
くるりと後ろ向きになって、机に。
そして一番下の引き出しから、クリーニング仕立てのワイシャツを取り出して、
「すまん。」
右手を2人に挙げながら、
「5分、待って。」
流歌、
「…ったく、もう~~。」
翠、何をどうすれば…全く分からない状態で…、
「あ…。はははは。いいえ…はい。」
流歌、困ったような顔をして、翠に平謝り。
「逢坂さん、ほん~とにごめんなさい。」
翠、
「いえいえ。ははは。」
「まったく、両極端なんだから~~。」
翠、なかなか落ち着かない様子。
けれども流歌、一度、
「ふぅ。」
そして、ソファに手を伸ばして、
「ふん。逢坂さん、どうぞ。」
そしてにっこり。
やがてドアがガチャリと。
「お待たせしました。」
そう言って、手を差し伸べた流歌の手に脱いだYシャツを。
受け取ったYシャツを流歌、キャビネットの下のボックスに入れて。
そして、ハンガーから背広を外して寺崎の後ろに。
その光景を、目をパチクリさせて見ている翠。
寺崎、背広の両肩を持った流歌に従うように、左手、そして右手。
そしてようやく翠の前に右手を…。
「改めて、寺崎です。」
流歌、机の引き出しから一枚のカードを…。
翠も差し出された右手に自分の右手を合わせて握手。
「初めまして。株式会社アンジェリーナ、ジェシカの逢坂翠と申します。」
翠、寺崎に丁寧にお辞儀をして。
そして流歌が寺崎に名刺を渡す。
翠に笑顔で寺崎、名刺を差し出しながら、
「今後ともよろしく。」
翠、その名刺を受け取り、自分もバッグから名刺を渡す。
「ウチの草島がね、逢坂さんに会いたい、会いたいっ、うるさくってね~~。」
寺崎。
翠、
「え~~~???」
「ほら、あの…いわくつきの…例のヤツ。」
「あ…、あ~~。」
「最初ね、インパクトは十分にある。…けど…、やってくれるとこ、ないよ。…って、言ったんだけど。」
翠、口を一文字に、そして笑顔で…、
「……。」
「それ、やってのけて、しかも、増産って。凄いよね。」
寺崎に一礼して翠、
「ありがとうございます。」
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