翠、数人の中から、倒れている巽の元に入ってきた女性ふたりに、
「急に倒れて…。」
そして巽の顔に、
「ユウマ。しっかりして。」
ひとりの女性、男性の体に触れて、
「……。麗奈(れな)。」
もうひとりの女性が男性の顔に触れて、少しだけ横にして、
「師長…。」
そこに駅員、
「すみません、お待たせしました。今、救急車、向かってますんで。」
男性の体に触れた30代風の女性、
「麗奈、動くよ。横にしよ。」
もうひとりの女性、
「はい。」
そして、
「すみません。頭…持っていただけます…???少し場所、移動します。」
足元を持っている女性、
「すみません、男性の方、手伝ってくれます…???」
大凡5人掛かりで巽を移動させる。
ひとりの若い感じの女性、
「師長…。」
スマホを耳に、30代風の女性、
「うん。多分。今、電話…。あっ、お疲れ様です。脳神経内科の奥村(おくむら)です。今から急患、向かいます。準備、お願い。」
そして、周囲には聞こえないように、
「………。お願い。」
電話を切って、
「駅員さん、救急車、どのくらい…???」
「あ、あ~~。あと…、5分…くらいかと…。」
女性、若い方の女性と男性の様子を伺いながら…。
翠、
「あ…、あのぉ~~。」
女性、その女性に向かって、
「ごめんなさい。奥村。奥村美南(おくむらみなみ)と言います。看護師です。」
翠、
「あっ。か…看護婦さん。」
「そして、こっちが…。」
もうひとりの女性に手を差し伸べて、
「看護師の…沢木、沢木麗奈(さわきれな)。」
翠、生きた心地もしない状態で…。
「歩いてて、急に…倒れて…。」
美南、
「そう。うん。…その前は…???」
「いや…特に…何も…。」
美南、腕時計を見ながら…。
そこに、ようやく、担架が…。隊員に、
「急いで。…もしかして…。多分…この状態…。脳卒中…。ここから一番近い、聖露奈理亜(せいろなりあ)医科大学にはもう、連絡してあります。私もタクシーで向かいますから。」
隊員、
「あな…たは…???」
美南、
「そこの、看護師です。」
「分かりました。お願いします。」
担架の巽に付きっ切りになって、翠、
「ユウマ。ユウマ。巽。」
隊員、
「あな…たは…???」
美南、
「その男性と一緒の人。」
そして女性に向かって、
「あなた…。もし、よろしかったら、一緒に、救急車…。」
翠、
「あっ。はい。」
美南、
「麗奈、行くよ。ごめんね、休みなのに。」
麗奈、
「はい。何仰います。師長だって、休みでしょ。」
「まっ、お互い、講習だったもんね。半分、仕事みたいなもん。…とにかく時間がない。急ぐよ。」
救急隊員に、
「お願い、一刻を争う。早ければ早い方が有利。」
隊員、
「分かりました。」
駅を出て、救急車両に。巽に処置を施している隊員。
全く動くことのない巽に翠、
「どうしちゃったのよ~~。さっきまで、なんでもなかったのに…。」
自然に巽の右手を握っていた。涙が溢れて、流れて止まらない。
隊員、
「病院、すぐですよ。」
翠、
「はい。ありがとうございます。」
その隊員の言うとおりに、数分で、病院到着。すぐに搬送。
隊員、付き添いの女性に、
「こちらで…、お待ちください。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。