絃の、その、「えっ???なんで、なんで…???」に、
翠、
「答えは簡単。」
絃、
「へっ…???」
「婿養子になってくれ。」
「あ~~~~。そっか~~。」
「…で、とうさんは、その女性の父親の申し出通りに、婿養子に…。」
「おじいちゃん。相当悲しがったんじゃ…。」
その絃の声に翠、
「う~~~ん。その辺の事は~~。聴いてないから…。ん~~~。」
「でも…、その…みどのおとうさん…、結婚した人って…。」
「ふん。当然、私のかあさん、逢坂澪(あいさかみお)。埼玉で…暮らしてる。小学校教師なんだ。」
「へぇ~~~。そうだったんだ~~。」
「うん。かあさんの家系は…教育系統。おじいちゃんは…高校の教頭先生…だった。」
「わお。凄っ。」
「そして、おばあちゃんは…。かかか。高校の…事務員…だった。かかかか。ふたりとも、もう完璧に、年金暮らしだよ。」
「へぇ~~。」
ふたりともに、駅に向かいながら…。
「えっ…???でもさ…、みどのおとうさんって…???」
「私のとうさん…、うん、市役所の福祉課の職員。料理人から一転。全くの畑違い。」
その声に絃、
「え~~~~。マジで…???」
「うん。…いや…、だって、とうさん、かあさんに一目惚れして、かあさんと結婚できるなら、なんでもやるって。」
「ふ~~ん。」
「それに、おじいちゃんもとうさんの、かあさんに対する献身ぶり…、分かったのかな…。とうさんに仕事、紹介したんだって。…で、市役所の福祉課。」
絃、
「ふんふんふん。」
頷きながら。
そしてひと呼吸おいて翠。
「そんな中、おじいちゃんとこの高校、バレーボール部の監督。数学の先生なんだけど、離婚してシングルパパになっちゃった。…つまりは私の高校の事なんだけど…。」
絃、笑いながら、
「わお。」
「…で、おじいちゃん、何を思ったのか、とうさんに、新しい監督が来るまで、頼めないかって…。バレーボール部の監督。」
「へっ…???みどのおとうさんって…???」
そんな絃に翠、
「ふん。中学から高校、大学まで、バレーボール部の選手。その傍ら、料理って…やつかな~~。」
「そう…だったんだ~~。」
「うん。だから、料理も得意。」
「ふ~~ん。」
駅の改札を抜けて。
翠のスマホにLINEの着信音、
「おっと~~。ゆず~~。…チーフ、昨日はありがとうございました。あの後…、ユッキにも見舞い…行ってきました。元気だった。じゃ…。…か~~。」
絃…、
「ん~~???」
「結局、ゆず、あれからユッキに見舞い…行ったんだ~~。今頃、ライン、よこしやがって~~。かか。」
ホームに立って翠。
「ふん。やっぱり…、心配だよ。自分の隣にいた人が、倒れたり、変になっちゃうと…。」
絃、
「だよね~~。」
その時、翠、
「あっ。」
絃、
「…ん…???」
画面を電話履歴に替えて指をトン。
5回のコールでようやく電話に出る橙。
「はいはいはい。チーフ、お、おはようございます。びっくりした。」
絃、
「みど、電車来た。」
翠、
「うん。今、終る。ゆず、あんた、阿川さん…電話した…???心配してるよ。」
その声に橙、
「わっ!!!いっけな~~い。」
「電話…してあげて。これから私たち、電車に乗る。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。