ご飯を食べながら翠、
「ねっ、ユッキ…???」
薫郎、
「ん~~???」
「ゆずの…初恋の人、ユッキ、なんだってね。」
その一言で、完全に体の動きが止まる薫郎。翠をじっと見て。
そんな薫郎に構わず、おかずを食べている翠。
薫郎、
「えっ…???」
翠、
「ふん…???」
「ゆずの…初恋の人…???俺…???」
「うん。万がそう言ってた。ゆず本人から…訊いたって。…だから、中学の時、ユッキ、転校する前に、ユッキに、手編みのマフラー、渡したって。」
薫郎、慌てて、
「みど。みど。あの…。」
「だから…夕べ、その事…聞こうと思ったんだけど…。ユッキ、知ってるかなって…思って…。そんな時に…。」
声を小さく…、
「あぁ~~なっちゃったし…。」
薫郎、
「みど。俺…。」
翠、キョトンとした顔で…。そしてクスリと笑って。
「初めて。」
薫郎、
「うん…???」
「ユッキと初めて、あんなに強烈なキスしたの。何度も何度も。」
薫郎、唇をがっしりと口の中に入れるように、
「ん…。んん…。ん…。」
「しかも、裸で、あんな風に、ユッキ、羽交い絞めしたの…、初めて。」
薫郎、
「みど…。」
翠、
「ユッキの体…、温かかった。」
「みど…。」
「ごっちそう~さま…、でした~~。」
両手を合わせて翠。
薫郎、
「みど、昨日…俺たち…。」
翠、立ち上がりながら、薫郎に、
「ふん…???」
薫郎、
「俺…、お前に…???」
翠、その声に、
「かか。」
笑って、そして、
「あ~~。」
キャビネットの中に茶碗と皿と箸。
「んんん…。私たち…、あれから…、抱き合ったままで…、寝ちゃったみたい。ユッキのほっぺ、一生懸命、指で押しても、起きなかったし。こんにゃろ、私より先に寝るな。って言っても、今度は、私の胸に頭、突っ込んでくるし…。」
目が点のように翠の話を聞いている薫郎。
翠、そのまま振り返って、
「あんなんで、エッチできる訳、ないじゃん。」
むすっと怒ったように。
薫郎、胡坐を掻きながら、両足首を両手で握るように。
そして頭をあちらこちらに。口は真一文字に。
そして、足首から放した左手で、頭の後ろを掻きながら、
「ん~~~。そっか…。うんうんうん。」
そして下を向いて、
「かかかか。そっか、そっか。いやいやいや。」
「だから、あんなに店、手伝わなくって、良いって。」
腕組みをして翠。
「疲れ過ぎてたんだよ。」
薫郎、
「はははは。はい。ごめんなさい。ご心配お掛けしました~~。」
翠に丁寧に頭を下げて。
翠、
「もう!!!」
そのまま薫郎の前に座って、薫郎の顔を両手で押さえて、そのままキスをする翠。
薫郎、慌てて、
「ん…ん…。」
そのまま翠の体の勢いから押されるように、後ろに倒れて。
それでも、離れない、ふたりの唇。
数秒後、薫郎の唇から自分の唇を外し、薫郎を抱きしめながら、
「ゆず、ユッキの事…、好きなんだって。」
目だけ、キョロキョロと動かす薫郎。
「10年前の…ゆずの…その時の気持ちが…今、また…。」
薫郎、
「み…ど…。」
「私や万たちは…10年前のゆず…、知らないから…。でも、今のゆずは、本当に可愛い、そして素敵な女性。…もしかしたら、私なんて、数年で追い抜かれるかも知んない。」
「みど。」
ようやく薫郎から顔を起こして。薫郎の体を跨いで。
「ほんとうはね。私が悪いんだと思う。」
薫郎、
「ん…???」
「ゆずを、こんな風にしてしまった。その原因は…私。」
その声に薫郎、
「えっ…???どういう事…???」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。