「巽に…優しくしてもらえるの…。最後…なのかな…。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.115.

ドキドキ 橙、声を震わせながら、
「う…うう。これが…、巽…、最後なのかな…。巽に…優しくしてもらえるの…。最後…なのかな…。」
目を涙で濡らして、左上の巽の顔を見る橙。
体育座りの脚を右に崩して、体は左側の巽の体の方に…。
涙が出て、そして、今度は口の中の物を飲み込む橙。
自分の顔が巽の左手で引き寄せられるのが分かる。
近づいてくる巽の唇。両手は肩より上、そのままの状態。
橙、薄く閉じたままの瞼。

巽の左親指が橙の右頬の涙を拭って、少し開かれた橙の唇に自分の唇を合わせる。
そのままがっしり橙の体を抱きしめる巽。

その時、初めて橙の体が動く。両脚は右から左に。そして両手で巽の両頬を…。
一旦、巽の唇から自分の唇を離し、今度は自分から巽の唇に。
そして引き絞ったような声で、巽を抱きしめながら、巽のシャツをがっしりと握り絞めて、
「巽―――――――――っ!!!」





雅樂、いつもの市場で、
「よぉ~っす。管(かん)さん、いつもの頼むよ。」

管と言われる店の男性、60代風のがっしりとした体格、
「おぅ、雅樂じぃ、毎度~~。かかかか。いつもながら、景気いいねぇ~~。これだけの素材、全部捌くたぁ~~。雅樂じぃくらいだ。かかかか。なぁ、ユッキ。」

薫郎、
「えっ…???えぇ~~。はははは。さすが、菅さん、いっつも…いいの…置いてますよね~~。」

男性、
「あったりめぇだ、お客さんに、喜んでもらわねぇと…。ほぃ。こいつももってけ。」

いきなり薫郎にレバーの塊を。

薫郎、
「お~~っと。はは。」


馴染みの業者を点々と雅樂、
「おぅ、次でぃ。」
そして、薫郎の顔を見て、
「どうしてぃ、ちょいと、いつもより、元気ねぇ…みてぃだが…???かかかか。夕べ、ちったぁ~無理したかぁ~~???」
笑いながら薫郎に。

薫郎、
「えへ~~。いやいやいや。久し振りの仕入れで、気持ち良くってねぇ~~。さすがに、良いのが揃ってる。」

雅樂、
「あぁ~~。今日も、とことん、みんなに旨ぇ~~っての、作らねえとなぁ~~。」

薫郎、
「うん。」

そして次の業者に雅樂、
「おぅ~~。克(かっ)ちゃ~~ん。おはよ。」

「あいよ~~雅樂じぃ、おはよ。何だい、今日は珍しいねぇ~~。え~~。かかかか。」
克っちゃんと言われる50代の女性。

雅樂、そして薫郎、
「へっ…???」
「えっ…???」

克子、
「おはよ、絃ちゃん。」

その声に後ろを振り向く雅樂と薫郎、
「へっ…???絃…???」
「絃~~~。」

絃、
「へへへ。来ちゃった~~。」

克子、
「ま~~ったく、こんな綺麗な子~~。雅樂じぃの店で働かせるの、勿体ねぇよ。かかかか。」

絃、
「克子おばちゃん、いつも、どうも~~。」

克子、
「かかかか、そうだ。絃が珍しく来てんだ。ちょっと待ってな。」

3人、
「…???」

克子、新鮮野菜を段ボールに、
「絃、ほらよ。」

絃、
「う~~っそ。こんなに~~???」
克子から段ボールを両手に持たされて絃、雅樂と薫郎を見ながら目を見開いて笑顔で…。

雅樂、
「かかかかか。克っちゃん、ありがとよ~~。恩に着るぜ~~。」

薫郎も、
「ありがとうございま~~す。かかかか。ほ~んと、こりゃ凄いや。」
そして、歩きながら、
「絃、俺、持つよ。」

絃、
「うん。ありがと。」

雅樂、
「それにしても、珍しいじゃねぇか、絃…???」

そんな雅樂に絃、
「ふん…???ふん…。まっ。何て言うか~~。ちょっとした…気分…???…ふん。」

「ちょっとした気分~~???」
薫郎と雅樂と同時に。

薫郎、
「かかかか。何それ…???」

雅樂、
「けけけけ…。まぁ、いいわな…。あぃあぃあぃあぃ、活気いいねぇ~~。えぇ~~。」





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