元台湾在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて台湾に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系台湾ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

なぜ日本ではコロナによる重症者数及び死者数が非常に少ないのか?

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アジア人だろうが白人だろうが黒人だろうが人間は人間。コロナはコロナ。なのになぜ日本では万単位の死者が出ないのでしょうか?


私は数ヶ月前からずっと「BCG接種のおかげ」だと思い込んできましたが、最近の専門家たちの意見を踏まえつつ、改めて考えてみたいと思います。

 

現状


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行が始まって以降、というかニュース番組で取り上げられるようになってから約半年が経ったわけですが、現時点での日本における死者数は約1,000人となっています。


この数字は例年のインフルエンザ死者数の約3分の1であり、日本における1日あたりの肺炎による死者数は例年約200人であること、日本における年間自殺者数が約2万人であることを考慮すると、決して多いとは言えませんし、結局のところただの「風邪」でしかなかったのだと結論付けても全く問題ないように思われます。連日新規感染者数が報道されていますが、風邪を引いた人の人数を数えて何が面白いのだろうかと私には疑問に思えてなりません。


しかし、これはあくまで日本に限った話です。欧米諸国では非常に多くの人たちが亡くなっていますし、そのほとんどが高齢者とは言え、そういった国々においては「コロナは怖くない」などとは口が裂けても言えません。明らかに怖いですし、国を挙げて対策すべき国難です。


それでは一体、この日本と欧米諸国の間におけるコロナ死者数のあまりにも大きな違いの理由は何なのでしょうか? 日本の人口を考慮すれば、本来なら日本でも5万人程度は亡くなっていてもおかしくないはずなわけで、なぜ日本人はコロナに感染してもなかなか重症化せず死には至らないのでしょうか?

 

4つの仮説


もちろんこれはまだ学術的には解明されていない話であり、現時点では専門家が言っていることも「仮説」に過ぎません。しかしながら、既に半年も経っているということで、もう大方仮説も出揃ったのかなといった印象を私は持っています。


現在世間一般に認知されている説は以下の4つです。

 

  1. 何らかの理由(おそらくはBCGワクチンの接種)により日本人の自然免疫は強化されており、コロナにはそれで対応できている。獲得免疫で対処するまでもないから抗体が作られず、抗体検査をしてもほぼ全員が陰性となる。
  2. ただのまぐれ。日本は中国に近く、早めに対処したからコロナの抑え込みが上手くいっているだけ。今後状況が大きく変わる可能性はある。
  3. コロナの型の違いによる。武漢型は弱毒性であり重症化しにくい。ヨーロッパ型の毒性は強く、今後ヨーロッパ型が日本で蔓延すれば重症者数や死者数は急増する。
  4. 日本人の衛生観念は欧米人のそれよりも優れている(手洗いやマスク着用の習慣、家では靴を脱ぐ習慣など)から。国民皆がコロナを怖がり、感染対策もしっかり実行しているから。


1番目の自然免疫が違う説に関しては、7月17日に東洋経済オンラインに出ていた国際医療福祉大学の高橋泰教授の「感染7段階モデル」の紹介記事に詳しく書かれています。


2番目のまぐれ説は、神戸大学の岩田健太郎教授の意見です。先ほどAbemaTVのニュース番組を見ていたところ、本人が登場して「まぐれでしょう」と言い切っていました。


3番目の型が違う説は、舛添要一さんがだいぶ前から主張しているものです。


4番目の衛生観念が違う説は、世間一般によく言われている話です。これだと思い込んでいる方は現在これをお読みの皆さんの中にも多くいらっしゃるかと思います。

 

正解はどれ?


ではどれが正しいのかという話になるわけですが、まず1番目の自然免疫が違う説の否定は難しいと思います。ここ最近はPCR検査数の増加に伴ってどんどん新規感染者数が増えているわけですが、要は今までは検査しなかったから表に出てこなかったというだけの話に他なりません。市中感染などだいぶ前から広がっていたということです。感染してもほとんどの人は無症状ないし軽症で済んでしまうため、検査対象にはならなかったわけですが、たとえ無症状だろうと他者に感染させる能力はありますから、我々が気付かぬうちに特に人と人との距離が近い都市部では急速に広がっていったのだろうと考えられます。


そして、やはり決め手は抗体検査の結果です。東京と神戸で得られたデータでは陽性率は0.1%程度ですから、近似的にはゼロです。本来であれば、感染してある程度症状が出ることで体内で抗体が生成されるわけですが、そういった過程を経る前に元々人体に備わっている自然免疫で対処できてしまっているため、感染してもなかなか日本人の体内では抗体が生成されないのです。ですから、日本人は何度も感染する可能性がありますが、これは生きていれば何度も風邪を引くのと同じです。なお、欧米には既に抗体を持っている人が多いわけですが、この新型コロナに対する抗体はあまり長持ちはしないようで、3か月程度で消失するそうです。ですから、欧米人であってもやはりコロナには何度も感染する可能性があります。繰り返しになりますが、要は全くもって風邪と同じなのです。ワクチンはほぼ完成してはいるようですが、50%程度の効果しかないと言われています。この世に風邪のワクチンが存在しないのと同じです。インフルエンザのワクチンは存在しますが、あれは季節性だから意味があるのです。真夏でも元気な新型コロナには同じ手法は通用しません。


ということで、1番目の自然免疫が違う説が最も確からしいと個人的には思えてなりません。ただ、それだけなのかどうかまでは私にはわかりません。おそらくは他の3つもベストな答えではないというだけで、一理ある可能性は高いと思うのです。


2番目のまぐれ説ですが、まぐれかどうかは置いておくとして(こういうのは科学者が使うべき言葉ではないので)、日本におけるコロナ対応の開始時期が比較的早かったというのはある気がします。当初、欧米諸国にとってコロナ問題は完全に対岸の火事でした。そんな中、クルーズ船の件もあり日本では比較的早い段階で皆危機感を持つことができたのです。


3番目の型が違う説に関しては、そもそも各国で蔓延している新型コロナウイルスの遺伝情報を解析すると実際に異なっているそうなので、とりあえず型の違いが存在すること自体は確かです。そして、最近日本で広がっているコロナは明らかに日本国内で変異したものだそうで、このことが以前よりもさらに重症化率及び死亡率が日本国内で低下していることの背景にあると考えられています。要は、志村けんが亡くなった頃に日本国内に存在していたコロナよりも、現在拡散中のコロナの方が毒性が弱い可能性があるのです。しかしながら、この型による毒性の違いは決して大きいものではないとも言われています。「いずれ凶悪なヨーロッパ型が国内に入ってきたら、、、」と皆言うわけですが、そんなもの、既に入ってきていないはずがないのです。詳細は割愛しますが、世の中には実に様々なパスポートやビザが存在し、人の往来は止まっているように見えて決して止まってはいないからです。


そして最後に4番目の衛生観念が違う説ですが、これだけで死者数比較における50倍や100倍の差は説明できませんから、主要な理由にはなり得ません。ただ、コロナ対策の観点から言えば効果があることは間違いありません。実際のところ、例年に比べて風邪を引く人やインフルエンザに罹る人が有意に減ったそうです。ごく普通の風邪だろうとインフルエンザだろうと、拗らせば肺炎にもなり得ますし、生命リスクもありますし、重症化すれば肺胞の繊維化等により後遺症が残る可能性すらあります。そもそも風邪というのは怖いものなのです。


そんなわけで、私は相変らず「何らかの理由(おそらくはBCGワクチンの接種)により日本人は自然免疫が強化されているから」というのが日本でコロナ死者数が非常に少ないことの主な理由だと考えています。対策開始時期の違いや型の違い、衛生観念の違い等も影響している可能性はあるでしょうが、それらが主要な理由になり得るとはとても思えません。

 

これからどうすべきか?


兎にも角にも、日本においては「約半年間でコロナ死者は約1,000人」という結果が出たわけです。この事実を踏まえた上で、我々は今後どう生きるべきかという話になるわけですが、我々が今後注意を払うべき数字はコロナの新規感染者数ではなく、間違いなく「自殺者数」です。


過去のデータを参照すれば誰にでも理解できる話だと思いますが、経済が悪化すると年間の自殺者数は万単位で増えます。「国民の生命よりも経済を優先させるのか!」と政府に対して文句を言っている人をリアルでもネット上でも見かけますが、日本に限れば、コロナ対策をすればするほど人が死に、経済を優先することにより自殺に追い込まれる可能性のある人たちを助けることができるのです。


現在日本のメディアが報道すべきなのは、新規感染者数ではなく、コロナ死者数と新規自殺者数です。昨年の自殺者数は約2万人ですが、今年は間違いなくもっともっと多くの人が自ら命を絶つことになります。こうしている間にも、誰かが首を吊り、誰かがマンションの上階から飛び降りているのです。


私は各種メディアのようにコロナを飯のタネにするつもりはありませんし、政治的な意図を持ってこうやって意見発信をしているわけでもありません。ただ、多少分野は違えど一人の専門家として、この悲しい現状に対しては何か言わずにはいられないのです。数字は嘘をつきません。どう死ぬかは問題ではなく、少しでも多くの命を救うべきです。


最後にもう一度だけ繰り返しますが、コロナが存在しなかった2019年に、日本では約2万人が自殺しています。来年、発表された統計を見て、「あいつの言ってたことマジで正しかったんだ、、、」なんて言っても遅いのです。日本におけるこれ以上のコロナ対策は殺人行為そのものです。