◆自分色に染める色無地ー七回忌に向けてー | ナツメミヤビの大人の帯遊び~貴方らしさがきらりと光る着姿を~

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普通に素敵な大人の着姿をお手伝い。
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自分軸を知って広がるきものパーソナルカラー診断講座。

「同じ日々が続くとは限らない」

 

誰もが頭では分かっていることですが

2020年春、こんな状況になるとは

誰も予想もしていなかったでしょう。

 

コロナの騒動が起きる少し前から

身近なことから整えていく時期のような気がして

過ごしていた今年は、私ごとですが区切りの年です。

 

この6月に娘の七回忌を迎え、

ナツメミヤビをはじめて5周年になりました。

 

同じ日々が続くとは限らないけれど

その先は辛いだけではなくて

光も希望もあることをこの6年間で体感してきました。

 

渦中にあるときは、最初は光もゴールも見えません。

でも、誰か任せではなく自分で考えて行動すれば、

そうすれば一緒に道を進んでくれる大切な人たちが

いつの間にかまわりに集まってくれました。

逆にステージが変わり、去っていく人もいます。

 

世界の状況は決して安心できるものではないですが

これを境にどんな道を歩むのか、自分自身にかかって

いるそんな時期ですね。

 

・・・・・・・

 

開業5周年で何かしようとは思いつかなかったのですが

七回忌に当たって色無地を作ろうと思い立ちました。

 

一周忌も三回忌は少し記憶もあいまいな状態で

きものを着ることも思いつかなかったのですが

 

「お母さん、きものの先生なのに、なんできもの着ないの?」

と言われている気がしたのが昨年末でした。

 

夫に相談したら「いいね!いいの作ろう!」と

思いつきに喜んで乗ってくれました。

 

 

白生地は名物裂笹蔓文を選びました。

いつもならもっと落ち着いたモダンなものを選びがちなのですが

なぜかこの可愛いさに惹かれました。

 

入学式のお母さんの気持ちに近かったのかもしれません。

娘が可愛いと喜んでくれるかなと思ったのです。

 

❖笹蔓文(ささづるもん)

300年に一度実を付けると言われる竹の実と松毬と六弁の

小花文様で品がよく愛らしい、四季を通じて使える文様です。

色喪に使うので、吉祥文様ではなく両方に使える柄をと選びました。

 

顔色が暗くならないけれどぼんやりしないように

ウォームな中明度のグレーをベースに

少しだけクール、青みに振って、

モチーフの甘さを色で押さえることにしました。

 

パーソナルカラーから言えば、

ずばり似合うスプリングシーズンのカラーではありませんが、

色喪服として着ることを考えて落ち着きと控えめさを出すため

私の場合はオータムの濁色だと重すぎて大柄に見えるので

すっきり見えるクールなウィンター寄りに振りました。

 

もう七回忌・・・家族としての装いは喪の「略礼装」となります。

帯は黒喪帯でなくともよいので、蓮の文様の染帯を選びました。

 

 

帯締めはシンプルなグレーでもよいのですが

翡翠は喪にも使える宝石のひとつなので

もう15年以上前に手元にあったものを使うことにしました。

 

帯締めはあふの四分紐、橡色(つるばみ色)です。

青みにも黄みにも見える懐の深い色です。

(実は帯締めの方が少し太く普通なら通らないのですが

ちょっとした裏技を使えば使うことができます。)

 

草履ももう黒ではなくてもよいのですが、黒のほうがしっくりきました。

 

喪のお草履、バッグは殺生を避ける意味合いから

本革は使わず、布製かマットな質感を選びます。

 

鼻緒は「葡萄唐草文」にしました。

 

❖葡萄唐草文(ぶどうからくさもん)

正倉院文様のひとつ。

葡萄はたくさんの実がなることから豊穣めでたい意味もありますが

仏堂の敷物にも使われており、慈悲や慰安の意味も含みます。

喪にも両用できる柄です。

 

きものも、鼻緒も同じ曲線的なラインで優しげに合わせました。

 

背には縫い紋で一つ紋を。

実家の木瓜(もっこう)共薄(ともうす)陰紋(かげもん)にしました。

 

❖紋の濃さ

共濃(ともこい)・・・地色より濃い紋

共色(ともいろ)・・・地色と同じ色の紋

共薄(ともうす)・・・地色より薄い色の紋

 

背紋はご先祖様を表します。

先に空に帰った娘も年は幼いですが、私のご先祖として守ってくれる存在です。

 

光沢のある刺繍の糸が背中できらりと光を集める様子が目に浮かび、

お守りのように明るい気持ちにつながる気がして薄い色を選びました。

 

喪ではない場面でも着るに相応しい明るさを背の紋が後押ししてくれる。

思った通りの素敵な紋になりました。

 

手元に反物が届き、これから和裁士さんにお仕立てをお願いします。

 

KICCAきものカラーコーディネーター講座で学んだきものの色彩、

コーディネート、似合う色やスタイル。

 

好みだけでなく、様々なことを組み合わせながら

これでよかったと思える納得の誂え方をすることができました。

 

きものを作るのは、とても知的な作業です。

 

知識は必要ですが、TPOだけでなく、似合うだけでなく、

人の気持ちも乗せる作業です。

 

心華やぐ色、あなたを輝かせる色があります。

心落ち着く色、あなたを癒す色もあります。

 

・・・・・

 

生きていたら娘はこの春小学一年生、入学式です。

お母さんは着付け師として、同級生のお母さん方の着付けを

心を込めてさせていただきますよ。
 

今日と同じ日が続かないことを知っているから

目の前のことに感謝して、ひとつひとつ丁寧に仕事ができる。

 

大切なことに気付くことができるのは幸せなことです。

 

ナツメミヤビ5周年は出会ってくださった方に感謝しながら

これから出会う方々と明るい方向へ向かっていきたいと思います!

 

・・・つい長文になってしまいました・・・

お読みくださってありがとうございます。

 

ナツメミヤビ

上濃 雅子

 

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