WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

バレンタインに向けてクッキー型を3Dプリンターで作った

※2020/2/12 クッキー完成品追加
「バレンタインでムスコに電車のクッキー作りたいから、型をお願いね。」

珍しく嫁さんから作って欲しい物のオーダーを頂きました。そんなわけで作ってみた記事です。
ただし作ったのは抜き型までで、最終アウトプットであるクッキーはまだです。
→嫁さんが完成させてくれましたー!

参考までに、クッキー型の製造手順とスケッチを書き残しておきます。押し出しを使わず、スイープで作成してます。

クッキー型を設備・材料

3Dプリンターは、いつもどおりAdventurer 3です。最近気がついたのですが、Adventurer 3は肉厚1mm以上で、ラフト付き印刷なら打率が非常に高いです。材料をケチらず、どんどんタフな形状で出力しましょう。その方が時間も材料も節約出来ます。

3D-CADは、Fusion360です。個人は無料で使えて、概ねの機能をカバーしてくれるナイスCADです。製造元のAutodeskは経営状況が不安視される向きもありますが、いち個人としては頑張って欲しいです。

材料はPLAです。植物由来の環境に優しいプラスチックです。射出成形で良く用いられるABSに比べて、衝撃に弱いです。取り扱いに注意。

データ作成

データは、アウトラインのみの抜き型なら3フィーチャーで作れます。

  • お手本を見つける
  • アウトラインをスケッチする
  • 断面をスケッチする
  • スイープ

お手本を見つける

Googleの画像検索でお手本を見つけます。

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Fusionは画像を取り込んでトレースすることもできます。
ただ、複雑な形状でないなら、大まかな線長の比率を捉えておけば、スケッチには十分です。

アウトラインをスケッチする

後で使うスイープは、断面のスケッチをパスのスケッチに沿って回して肉付けする機能です。アウトラインは、パスですね。

1枚目が在来線の斜視図、2枚目が新幹線の側面図です。 Rは幾何拘束で"="付けるべきなのですが、修正なし一発で作る意思で、全て寸法を振ってます。真似してはいけません。

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スイープを回す場合、ピン角だと回らない場合があります。CADによってはスイープ中の自己干渉でエラーを吐いたりしますので。。。 モノヅクリ的にピン角で物を作るのは大変で、大抵は小さいRで作られているだけなので、遠慮なくデータにもRを付けておきましょう。パッと見で目立たない程度のRで大丈夫です。

断面をスケッチする

断面を書く前に、断面用のスケッチ平面を作ります。パス上の点を通り、なおかつパスと直行する平面です。
軽く触れた感じ、Fusionはパスが通ってない平面に断面を描いてもスイープが回ってくれましたが、この世にはパス上に、それも始点終点に断面スケッチが無いとスイープを回せないハイエンドCADも存在します。 困ったものですよね、Siemensさん?
なのでパス上に断面を描く癖は、付けておいた方が良いでしょう。

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断面は下記のとおりです。

TOP面に平面を多く作ったのは、出力時の剥離防止と型を押す時に手が痛くならないようにするためです。
高さは、正直20mmもいらないと思うのですが、発注者から10mmだと不安との声があったので安全率2倍で。
先端の刃の部分が1mm、これは結構厚いです。adventurer 3の実力なら0.7くらいまでは問題ないと思ってます。ま、厚い分にはヤスリで削れば解決です。

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スイープ

断面とアウトラインのスケッチを元に、1周スイープさせます。色々オプションはありますが、基本は触らなくて大丈夫です。スイープでエラーが起きる時に、方向を弄ったりしてみましょう。

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おまけ~刻印型~

抜き型だけだと簡単なので、刻印用の型も作っておきます。電車の窓枠に凹を付けます。別ピースなわけですが、これを同じパーツデータの中に作れるのが、マルチボディの良いところです。ですよね、PTCさん?

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イメージ用にざっくりスケッチです。
線が多くて汚い、悪いスケッチなので、良い子は真似してはいけません。

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押し出して、クッキーにめり込むところにC面付けたり、Z方向の受け兼位置決めを作っていきます。左右にぴょこっと出ている形状がそれです。Z方向は、抜き型の刃先端から-1.5mmで止まるようにしてます。薄すぎですかね?ま、力加減や貼り物で調整は出来ますので。。

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クリアランスは0.4mm。成形品だとガバガバですが、個人用3Dプリンターだと、割と詰まります。

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出力

stlで吐き出して、Flashプリントで自動サポート付け・PLA設定で書き出して、adventurer 3でぽぽぽぽーんです。

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やったぜ。

実戦!クッキー作り

嫁さんが型を使ってくれました!写真をペタペタ貼っていきます。

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記事をくり抜いたもの。型へのくっつきもなく、うまく切れている模様!窓枠の刻印はちょっと深めで、生地が薄くて切れそうです。厚み1.5mmになるよう作りましたが、2mm~2.5mmくらいで良かったかも。

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焼き上がって…

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チョコとアイシングで飾って出来上がり!これは試作1発目で、ブラッシュアップした本番Verがバレンタインに配布予定ですー!

まとめ

クッキー型を3Dプリンタで作りました。クッキーはまだ無いです。

実は今回、クッキーの型を作るというので、自分の思うサイズ感でパパッと作ってしまいました。(長手60mm)結果、「小さすぎる」と指摘を受け、サイズ変更の手戻りとなってしまいました。コミュニケーションは大切。なお、作り直したものは「大きすぎる」との感想を頂いてます。(長手120mm)

なお、この型の実戦は来週末になる予定です。型の強度や、刻印型の深さなど、やってみないとわからないこと盛りだくさんです。なので、この記事に載せた寸法設定を完コピでいけるかは、まだ見えていません。その点、ご留意ください。

<追記>
きちんと使える物になっていて、良かったです。嫁さんも喜んでくれて、3Dプリンタを買って初めて人に役立つ物ができたかと思います。何かを作って喜んでもらえるのは、公私ともに嬉しいものです…!

3Dプリンタによるお菓子の型は、実用性と作業の難易度のバランスが良くて、良い使い道になりそうですね。モデリング簡単なので、この記事を読んでくれてる皆さまも是非お試しくださいー!

参考にさせていただいたサイト

【2018年】3Dプリンターで自作クッキー型を作りたい - デザイナー脂肪

ホワイトデーのお返しに3Dプリンタで作った型でオリジナルチョコレート制作したら大変なことになりました - karaage. [からあげ]

こんな記事も書いています。 temcee.hatenablog.com

temcee.hatenablog.com