バッティストーニ 東京フィル 木嶋真優(vn) 《四季》と《惑星》 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(9月13日、サントリーホール)

 木嶋真優をソリストにしたヴィヴァルディ《四季》は、6-4-4-3-2の編成。バッティストーニ&東京フィルと木嶋は、自由で遊び心のある演奏を繰り広げた。木嶋のソロは、装飾音を入れながら、レガートをきかせた滑らかなもの。少し気になったのは、木嶋のヴァイオリンの音色がキンキンとしたデジタル的な音で、化粧が濃くグラマラスなこと。華やかさがあっていいとも言えるけれど。
 

木嶋真優とチェロ・ソロ(金木博幸)とのやりとりは、お互いが積極的でとてもよかった。ドローン音(バグパイプのような低音)は、金木の奏したものだろうか。


 「春」は流れるようにレガートで進んだ。「夏」の嵐の描写は、切れのあるリズムで、ノリノリの演奏はロック音楽のよう。「秋」第3楽章の狩りにでる胸の高まりを表すリズムは、意外に重く、あまり聞いたことのない表情だった。「冬」第1楽章は、農民たちの寒さに震える表情が目に浮かぶように描写的だった。

 

 後半はホルスト「組曲《惑星》」。CD録音も入っていたわりには第1曲「火星、戦争をもたらす者」は、バッティストーニの指揮が少し粗く感じた。

 

最も良かったのは、第7曲「海王星、神秘なる者」。新国立劇場合唱団(女声17名)は、指揮の冨平恭平とともにオルガン下手P席の奥から、繊細な弱音と安定したハーモニーを聞かせてくれた。これまで何度も聴いてきたが、今回ほど高い音が正確に歌われたのは初めてのこと。最弱音で消えていく合唱は素晴らしかった。

 

 次は第6曲「天王星、魔術師」が強弱の劇的な変化が面白く、印象的だった。
 

第4曲「木星、喜悦をもたらす者」は、速めのテンポで力強く進んだ。「ジュピター」の旋律が現れる中間部は、落ち着きがあり、この旋律を思い入れたっぷりに聴かせようというあざとさがなく、好印象だった。

 第2曲「金星、平和をもたらす者」は緻密だったが、ヴァイオリンのソロ(コンサートマスター三浦章宏)の音に濁りがあったのが惜しい。

 

9月22日(日)15時から、オーチャードホールで同じプログラムがあるので、今回粗く感じた部分は修正されるのではないだろうか。なお、チケットは完売とのこと。