テミルカーノフ指揮 読売日本交響楽団 ブラームス・プログラム | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


(10月20日、東京芸術劇場コンサートホール)
 ユーリ・テミルカーノフと読響の5回にわたるコンサートの最終回。元気に全ての公演を振り抜いた。風邪をひいてしまい、15日のサントリーホールでのチャイコフスキー交響曲第5番を聴き逃したのは残念だが、 今日はブラームス・プログラムで、読響から豊かな中低音を引き出し、重厚な演奏を聴かせてくれた。
 前半は、セルゲイ・ハチャトゥリアンを迎えてのヴァイオリン協奏曲。雄大で大河のようなテミルカーノフの指揮は大きな船のように、ハチャトゥリアンを支え、ハチャトゥリアンも伸び伸びとブラームスらしい力のこもった堅固な演奏を繰り広げた。日本音楽財団から貸与されたグァルデリ・デル・ジェス(イザイ)の漆黒の響きがブラームスによく合う。彼を聴くのは二度目で、前回いつどこで聴いたか思い出せないが、8年以上前かもしれない。作曲家のハチャトゥリアンとは関係がない。この間にずいぶん大きなヴァイオリニストになったと実感した。
 
 読響は、木管の名手たちが揃っており、技術的には全く問題ないが、できれば第2楽章はハチャトゥリアンの名ソプラノが歌うようなヴァイオリンに溶け込ませるような柔らかな甘い音が欲しかった。
 アンコールの曲名は聞き取れなかったが、アルメニアのフォーク・ソングのようだ。繊細な高音の悲しみを秘めた曲。ハチャトゥリアンは、今回の台風の犠牲者に捧げます、と前置きし、しみじみと奏でた。
 
 後半の交響曲第2番は、16型のフル編成。冒頭のチェロとコントラバスの主題から、ずっしりとした厚みのある低音が鳴り響く。第2主題では、第2ヴァイオリンやヴィオラの中音域がたっぷりと奏でられる。堂々と進軍するブラームスのスケールの大きな演奏は、巨匠の風格がある。
 
 読響の弦は強力で充実した響きだが、欲を言えば、小森谷巧が率いる第1ヴァイオリンが、もう少し艶のある美しい音色であったら、更なる名演になったと思う。
写真:(c)ジャパンアーツ