ライナー・ホーネック 紀尾井ホール室内管弦楽団(2月14日・紀尾井ホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


 

今日の指揮者は、実質的にアントン・バラホフスキー(紀尾井ホール室内管、バイエルン放送響、コンサートマスター)だったと、言ってもいいのではないだろうか。

 

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では、ホーネックは最初の出だしを指示しただけで、あとは、ほぼバラホフスキーにリードを任せ、自分のソロに専念していたように見えた。
 ホーネックのソロは、充分な準備を思わせる隙のない演奏。艶やかな音色と優雅な表情があった。バラホフスキーが入った時の
紀尾井ホール室内管は、弦の音のざらつきが消え、滑らかになる。

 

後半のベートーヴェン「交響曲第7番」は、名手揃いの紀尾井ホール室内管の実力を、ホーネックが最大限引き出したとは言えない、もどかしさを感じた。

 

ホーネックの表現は、中庸で癖がなく、無難だが、「これは」という、面白味に欠ける。もっと、深く入り込んだ指揮の方法が幾らでもあるのでは、もっと冒険してもいいのでは、と聴きながらずっと考えていた。

ホーネックの指揮に注目するのをあきらめ、バラホフスキーのリードぶりを見ることに切り替えたところ、その無理のない、自然で滑らかな弓さばきに、惚れ惚れと見入ってしまった。紀尾井ホール室内管のメンバーも、ホーネックではなく、バラホフスキーのリードに合わせているように見えてしまうのは、自分だけだろうか。

 紀尾井ホール室内管弦楽団は、強いリーダー・シップと、強固な音楽性を持つ指揮者が来ると、がぜん燃え、持てる力のすべてを発揮する。最近では昨年6月の鈴木雅明指揮によるモーツァルト「交響曲第29番」や、バルトーク「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」がそうだった。切れ味鋭い演奏は、次に何が起こるかわからない、スリルと興奮を覚えた。ホーネックと一緒に、ぜひそうした演奏を展開してほしいものだ。