しばらく前に、父の三回忌で数日帰省した。
昨年の一周忌以来だ。

ちょうど、ラグビーのプール戦が開かれていて
街には陽気な外国人があふれていた。

家族葬だったので、法事も
ほんとうに身内だけ数名であっさり済ませた。

今回初めて、父の墓参りに行くことができた。
数十分電車に乗って、父の生家があった小さな町の
静まりかえった駅で降り、
変な鳴き声を覚えたカラスにからかわれながら
秋晴れの住宅街を夫と歩いて、
ひとけのない小さなお寺の一角で
父の眠る墓を見つけた。

墓石は先祖の名でいっぱいだったので
父の名は横の墓誌にあった。
ひんやりと平らな石板に彫られた
懐かしい名前。

このひとと母がいたから
わたしが生まれたのだな。

わたしは父にとって
よい娘だっただろうか?

表だって喧嘩をしたことはなかったけれど
かといって仲良く深い話をすることもなく
お互いの心には踏み込まない
暗黙の距離感がずっとあった。

墓石に水をかけて洗う。
自然と、父に向かって

「おとうさん、来たよ」

と話しかけていた。

元気なうちに、病気になる前に、
あんなに弱ってしまう前に、

こんなふうに父にもっと
やさしく話しかければよかった。

夫と、墓石に向かって手を合わせると
秋風がざあっと木々を揺らした。

   



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