今夜の練習はお休み。
熊本陸上競技協会長を務め、1998年の陸上日本選手権の熊本開催や、
1999年のくまもと未来国体の開催など熊本の陸上界の発展に尽力されてきたた長谷川孝道さんが、今月の17日に87歳で他界されました。
名前を聞いてもピンと来ないかと思いますが、今年の大河ドラマ『いだてん』の原作となった「走れ二十五万キロ マラソンの父 金栗四三伝」の著者であると説明すればわかる方も多いことでしょう。
『いだてん』のオープニングに流れる資料提供者の1番目に長谷川さんの名前が表示されているように、
ドラマのストーリーはほぼ長谷川さんの著書の内容に沿って展開されています。
長谷川さんは濟々黌高校、早稲田大学と学生時代は陸上選手として活躍し、
その後、熊本日日新聞社に入社し、新聞記者として長く活動されました。
その新聞記者時代の昭和35年、熊本県が初の国体開催を迎えるのを記念して、
金栗氏のこれまでの偉業を伝えようと新聞に連載記事を書くこととなり、その担当となったのが長谷川さんでありました。
金栗氏のもとに足繁く通って出来上がった記事は翌年に単行本化され、金栗氏唯一の伝記として好評を博しましたが、
やがて絶版となり、全国的にその本が知られることはありませんでした。
長谷川さんは熊日を退職後に再び金栗氏の本を出そうと活動し、
初版の発行から52年後の2013年、金栗四三氏の誕生日でもある8月20日に、自費出版という形で復刊と相成ったわけです。
そしてその本がたまたまNHKの制作担当の人物の目にとまり、
金栗氏の人生は実に面白いということで大河ドラマ化という運びとなったそうです。
熊本ではずいぶん以前より加藤清正や細川ガラシャなど地元の偉人を大河ドラマに、という運動が続けられてきましたが、
金栗氏に関しては全くのノーマークで、地元の玉名市や和水町にとっても寝耳の水であったそうですが、
長谷川さんにとってもまさが自分の著書が大河になるなんて、思ってもみなかったことでしょう。
一介の地方の新聞記者の連載記事が書籍化され、絶版ののちに復刊され、NHKの目にとまり、大河ドラマになる、
この流れだけでもドラマ化に値するような奇跡が積み重ねられたストーリーではなかろうかと感じるのです。
金栗氏の奇跡と長谷川さんの奇跡、この二つが折り重なって仕上がった大河ドラマ『いだてん』が面白くないわけがありません。
きっと50年後に高く評価されるような歴史的作品となることを信じたいと思います。