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高速バス業界のジレンマ 多い若年利用者 高いコンビニ決済割合 柔軟な予約実現の壁に

2020-02-12 17:50:25 | 日記

コンビニ決済の割合が半数を超える高速バス事業者も

 

高速バスは路線によっても運賃の決済方法が異なる。写真はイメージ(2018年2月、中島洋平撮影)。

 高速バスの予約方法は、かつては電話が中心でしたが、いまではウェブ予約がほとんどになりました。予約したあとに運賃を支払う方法(決済方法)も、クレジットカード決済や、コンビニエンスストア店頭でのコンビニ決済、あるいは乗車当日の現金払いなど多様です。

1日1600便発着「バスタ新宿」 ズラリ並ぶ発券窓口

 多様な決済方法は利便性の向上に寄与してきましたが、いま、コンビニ払いや当日現金払いのデメリットも顕在化し、事業者も様々な対策を打ち出しています。今回は、高速バスにおける決済方法の変遷や課題、そして今後の変化を紹介します。

 高速バスのうち、片道100km程度までの短距離路線はほとんどが非予約制で、一般の路線バスと同様に車内で運賃を支払います。現金、または窓口や券売機で購入した乗車券を運転席横の運賃箱に投入する方法です。回数券、定期券を発行している路線も多く、一部は「PASMO」などのICカードも利用できます。

 対して、片道150kmを超える中・長距離路線は予約制がほとんどです。予約後に運賃を決済する方法は、バス事業者や路線によって異なります。

 ウィラーや平成エンタープライズなど、比較的新しく参入した事業者の場合、市中に自社の発券窓口を持っておらず、コンビニ決済やウェブ上でのクレジットカード決済が主流です。「予約後3日以内」といった期限が設けられ、それまでに決済しないと自動的にキャンセルとなります。また、これら事業者は特に大学生など若年層の利用が多く、そのなかにはクレジットカードを保有しない人もいることから、コンビニ決済が約半分、またはそれを上回るのが特徴です。

老舗高速バス事業者では「当日現金払い」OK 背景に鉄道との競合

 

昼行の短距離路線では、先着順に乗車し、車内で運賃を支払う方式が主流(2017年11月、成定竜一撮影)。

 そもそも、このように運賃の支払い方法が路線の種類により異なるのは、高速バスの成長の歴史がかかわっています。

 大手私鉄系やJR系など古くから高速バスを運行している事業者では、予約制であっても、乗車当日にバスターミナルの窓口や車内での支払いを認めている路線もあります。これは、高速バスと競合する特急列車へ対抗するためです。国鉄時代から特急列車のきっぷは全国の駅で購入できるのに対し、高速バスは、事業者ごとに窓口がバラバラです。そのハンデを克服するため、多くの事業者が電話予約サービスを導入し、乗車当日の現金払いを可としました。このような柔軟さによって、1980年代に高速バスは急成長したのです。

 ただ長距離の夜行路線については、その多くで発券期限が設定され、事前の支払いが原則でした。当初は旅行会社での支払いが中心でしたが、これを24時間対応するため、コンビニ決済やクレジットカード決済が普及しました。

 一方、片道2時間から4時間程度、かつ30分間隔など高頻度で運行される昼行路線では、リピーターが多く、なるべく気軽に乗車したいというニーズが昔から主流です。競合する特急列車の多くには自由席が設けられているほか、指定席を取っておいて乗り遅れても、当日中であれば後の便の自由席に乗車できます。その柔軟さに対抗するため、ほとんどの路線で「事前に予約を受けるが、支払いは当日」「発車時刻までに支払いがなければ自動的にキャンセル」というルールを採用しました。

 そのため、これら昼行路線では、たとえば復路で「遅めの便を予約しておき、用件が早く終われば早い便に変更して帰宅」という使い方が定着しています。発車時刻直前でも柔軟に便を変更できること、また、予約した便に万が一乗り遅れても経済的負担が小さいことが、鉄道の自由席と競合するうえで必須だったといえます。

高速バス 当日支払いやコンビニ決済のデメリット 技術発展で大きく

 

乗務員がタブレット端末で予約確認と乗車改札を行う(2017年12月、成定竜一撮影)。

 しかし、「当日支払い」には課題もあります。予約したまま乗車しない利用者がいた場合、ほかの利用者には満席で断っておきながらも空席となってしまうケースが生まれるのです。

 そこで近年、昼行路線にも発券期限を設定するケースが増えています。その背景にはIT化の進展があり、多くの路線で、車内にタブレット端末を常備し、乗務員が最新の予約や決済の状況を確認できるようになりました。

 バスが始発停留所を発車した後に、途中停留所から乗車する利用者がウェブ上で変更や取消を行っても、その内容は乗務員に伝わります。利用者にとっては、停留所へ向かう途中にスマートフォン上で「1本前に間に合いそうだから変更」「乗り遅れそうだから取消(返金)」といった使い方ができ、特急列車などの自由席同様に柔軟な利用が可能になったのです。

 2012(平成24)年からは、高速バスの制度が改正され、予約状況に合わせ運賃を常に変更することが認められています。現在はおもに長距離夜行路線で運賃変動が行われていますが、前述したIT化の進展により、今後は高頻度運行する昼行路線においても細かく運賃が変動していくと予想されます。「同じ日でも便(時間帯)によって運賃額が異なる」「同じ便でも、以前に予約した際の金額と、いま予約する際に適用される金額が異なる」といった状況が増えそうです。

 これらのケースでは、便を変更した際、元の予約との差額が発生します。このときに問題となるのがコンビニ決済です。

高速バス「決済額の変更」可能なサービスが今後のカギを握る

 コンビニ決済はいちどしてしまうと、差額が発生する予約変更への対応が面倒です。元の予約を取り消したうえで新しい便を予約決済するしかないのですが、元の予約の返金には金融機関などの手数料が必要なうえ、不正乗車防止のため元の券を発行元に郵送する必要があるケースもあり、利用者に負担がかかります。その点、差額の追加または返金が発生してもオンラインで自動的に処理されるクレジットカード決済が有利なのです。

 そもそもコンビニ決済は、不正乗車を防止するため、乗車時に「紙のきっぷ」を確認し回収したいというバス事業者の希望から誕生しました。しかし、前述のとおり最新の予約、決済状況をタブレット端末で確認できるようになり、「紙のきっぷ」は不要になっています。コンビニ決済は徐々にその役割を縮小しており、ウェブ予約限定の割引運賃を設定していても、コンビニ決済の場合は割引対象外とする事業者もあります。ただ前出のように、高速バスはクレジットカードを持たない人の利用が多いケースもあり、この構造が、柔軟な運賃施策を進めるにあたって、ひとつの課題となっています。

 ウェブ通販や旅行予約サイトなどに目を転じると、複数のサイトでの決済金額を取りまとめ、一括して後日に銀行振込などで支払う「後払いサービス」が急速に伸びています。このサービスは、クレジットカード決済と同様に決済金額の変更へオンラインで対応するうえ、カードを保有しない若年層や高齢者、あるいはカードの情報をウェブ上で入力することに抵抗を感じる人も気軽に利用できます。

 今後は、従来からのコンビニ決済に代わり、このような新しい決済方法を導入するバス事業者も増加すると考えられます。

成定竜一(高速バスマーケティング研究所代

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