北海道でジャガイモを作っていた時。

間違ってもイモ作りが上手だったとは言いません。

でも、収穫量が近所の農家より少なかったのは、品種や用途先の関係で総重量に対する製品率の差があったことをカンボジアに来てから知りました。(嘘みたいなホントの話)

とは言え、同品種の他生産者のジャガイモと比べて明らかに保存性の悪いジャガイモでした。

農家というものは、ほとんどの作物が同じ時期に収穫します。

なので、近所の農家以外の収穫の様子を見ることはほとんどありません。ましてや、近所の農家と言えどもお手伝いに行くことはほぼありません。

私の農場は十勝川の河口付近、海岸から数キロの低位泥炭地でした。

海抜4m、側溝の水は潮の満ち引きの影響を受け、1日に二回流れる方向が変わります。

寒流の流れる太平洋沿岸は、夏場海岸から数キロまで毎朝夕濃霧がかかります。

水はけが悪い、水たまりは時にドブ臭くなる、日照時間が短い、最高気温が内陸より数度低いなどなど。

今考えるとなぜ早く引っ越さなかったのか。

ただ、父が入植し、自分が生まれた土地を離れるという決断はなかなかできませんでした。

前置きが長くなりました。

では、カンボジアの土は?

平坦な水田地帯は粘土質、川沿いは同じ粘土質でも毎年の冠水で比較的肥料分が多い。

周辺の緩い丘陵地帯は粘土が比較的少なく、田んぼとマンゴーなどの樹木が混在している。

北部の丘陵地帯は粘土質が少ない分砂壌土が多く、水田には適さない。

プレイベン州の水田地帯

丘陵地帯の土は比較的灰色から黒褐色の土が分布し、ゴムなどの栽培に適しています。

ただし、ゴムは直根が伸びるので、下層に岩盤がある地域では生育が著しく劣ります。

田んぼを作るには、粘土が多く砂が少ないこと、果樹には粘土が少なく、砂壌土が好まれる。

胡椒は赤土を好むと言われるが、表土が灰色でも下層に赤土があれば栽培が可能です。

地下水の分布も影響があり、ある地域では線を引いたように栽培作物の変化がみられます。

シェムリアップ州北部のキャッサバ

当然、産地形成には非常に土地の素性が大きく影響を与える。加えて水の有無が大きな課題として存在します。

粘土質ならば、水をためて稲作も可能だが、砂壌土での稲作は不可能でしょう。

実際に現地に入ると、砂壌土なのに稲作が行われていたり、粘土質なのに野菜が作られていたりします。

私の知識では理解できないことが沢山見受けられます。

プレイベン州の野菜

では、土壌改良して、池を作って乾季に利用すれば何でもできるのかというとそうでもない。

そこにはコストという大きな課題があります。

増産のために化学肥料や農薬の使用も考えられるが、使用際しては農家の知識が求められます。

私の経験ではありますが、農家は現在の作業体系を変えたくないという本能があります。

多くの理由はリスク回避です。そして新しい技術を取り入れる時の費用の増加も障害になります。

収穫量と販売価格が保証されれば変化もあるでしょうが、現実的ではありません。

試験栽培の育苗棚

ある地域では、農薬も肥料も全く使わずに、果樹、野菜、穀類などを生産しています。

収穫量は少ないし価格も安いのですが、話を聞く限り数十年にわたって営農が続けられてきた。

生活は厳しいとは言いますが、子供は学校に行っているし、バイクも持っている。もちろん携帯電話も。

私は、急な変化を起こさせないことが重要だと考えます。

畑の作り方、種の蒔き方、管理方法などを実践して成果を見せる、体験させるなどが必要があります。

何より、各地にみられる、乾燥して販売している牛糞を売らずに肥料に使うことの効果を知ってもらう事だと思います。

この乾燥した牛糞は、多くが業者により隣国に輸出され、その先では農家が購入して肥料に使っているという現実を理解してもらう必要があると思います。

燻炭製造

何といっても、日射量の強さも大きな障害です。

胡椒畑、一部の野菜生産では遮光ネット、グリーンハウス(屋根はビニール、壁はネット)が普及しつつありますが、生産体系はまだまだ手探りです。

グリーンハウス、壁と天井の一部がネットになっています。

世界的にはアグロフォレストリーという考え方が数十年前から広がっています。

カンボジアでも、ゴムの幼木の間にピーナッツ、キャッサバ、大豆、野菜、などを栽培してる光景があります。

しかしこれは、成木になると日差しが少なくなるので、一時的なものです。

主作物の多収を目指すために、限界まで密植するため、混植(混栽)は難しいのが現状です。

しかし、日差しの緩和、樹木の地下茎による保水効果、樹木の下草対策、収穫時期の拡散、密植による病害虫発生の抑制など多くの利点も考えられるので、これからは真剣に取り組むべきだと思います。

クラチェ州のカシューナッツ畑

私は、日本の技術も必要ですが、地域に合った農法を創造していくことが求められていると思います。

少しづつ生産量が増えれば、買い付け業者はそれなりに対応できます。

ある時点で、ある作物の大量生産をしようとすれば技術が地域に広く普及していることが不可欠です。

家族の誰かが働きに出る環境から、親子三代が暮らせる農家を増やさなくては地域の経済は豊かになりません。

プノンペン郊外の野菜

そんなことをカンボジアのお正月の代休の間考えてみました。

カンボジア正月は4月ですが、コロナの影響で人の移動を止めるべく、正月の休みは8月末に引っ越しました。

まあ、小さな国ならではのウルトラCです。

来月末はカンボジアお盆で一週間、10月末は水祭りでまた連休。日系企業の皆さんには頭の痛い季節です。

 

 

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