「王道流失」or「王道継承」 ~秋山準のDDTレンタル移籍を問う | DaIARY of A MADMAN

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毎日、ROCKを聴きながらプロレスと格闘技のことばかり考えています。

日本のエンタメ界が “総崩れ” に近い惨状と化す中、プロレス界の地盤沈下も留まることが無いくらいの窮状にあえいでいる。

純粋な「競技」とは言えず、「観客参加型のスペクテイタースポーツ」の典型という位置付けのプロレスが、このまま「無観客試合」を続けていくことで、ファン離れを加速させるのは必至だ。

長年、プロレスを観続けている層は、もはや何があっても揺ぎ無い信念に裏付けされているから心配ないとは思うが、ここ数年のうちにファンになった、いわゆる「ライト層」はどうだろうか。

会場に行けない、テレビも地上波では深夜にしかやっていない、マスコミ等に取り上げられることがほぼ無い、という状況では、コロナ後の新時代に興味の対象であり続けられるのであろうか?

「プロレスブーム」と呼ばれた時期が、過去に何回か訪れたものの、長続きせず、そのたび、ごっそりと「同輩」が抜けていったことを知る身としては、どうしても「またか」という気持ちが先に立ってしまうのだ。

せっかく、「プロレス女子」なる新たな仲間を得ることに成功したのだから、何とか、この苦境を共に乗り越えたいものである。


ということで、前回の木村花さんの件に続き、この数ヶ月で驚いた“事件” としては、「秋山準のDDTレンタル移籍」が挙げられる。

秋山といえば、「ジャイアント馬場、最後の直弟子」という肩書きが示すように、まさに「王道」を継承し、体現するプロレスラーだ。

2000年のプロレスリング・ノア(以下、NOAH)の旗揚げに参画し、中心選手となるものの、“お家騒動”(各自調査)で悪名高き「白石伸生体制・全日本プロレス」に参戦、復帰を果たす。2013年初頭のことだ。

その後、馬場元子氏へ筋を通したことで、正当な後継者として全日本の社長に就任することになるが、秋山体制になって1年余りでNOAH離脱前後から行動を共にしていた潮崎豪、鈴木鼓太郎、金丸義信らが退団。“一枚岩” が崩れてしまう。

思えば、これが「終わりの始まり」だったのだろう。

特に、1990年代から秋山を支え続けてきた金丸との別離は衝撃だった。

 

頑張れ、秋山準! 〜遂に「子飼い」の金丸義信まで退団

 

 

 

秋山体制の全日本プロレスは、大型レスラーを中心としたダイナミックかつ、激しさを前面に出したヘビー級中心の世界で、まさに“馬場イズム” と言うべきもの。

 

秋山が戻る前のエース、諏訪魔は健在だし、その名パートナー、石川修司やゼウス、宮原健斗、ヨシタツ、ジェイク・リーなど、人材も揃っていた。(ジュニアヘビー級を蔑ろにしているという意味ではないよ。念のため)

 

秋山自身(と、同期の大森隆夫)は一歩引き、宮原と諏訪魔を中心とした三冠戦線は常に見応えがあったし、秋山の指導力で若手の底上げも図られ、また、“絶縁状態” にあったW-1やNOAHとの交流が再開したことも、秋山の功績と言っていいはずだ。
 

そんな中、突然の「DDTへのレンタル移籍」の発表である。

 

いや、移籍先がどうという話ではない。

 

コーチ役をTAJIRIに譲り、「無期限」のレンタル移籍。・・・事実上の追放だよなぁ、と思う人は少なくないだろう。秋山は「自分の役割が終わっただけ」というが、世間ではそれを「お払い箱」という。

 

 

秋山はよく「若手時代に川田利明には特別にしごかれた」という話をするが、それを言うなら、秋山もメインイベンターになってから若手には相当キツく接している。KENTA戦などは、プロレスでも格闘技でもない、公開リンチに見えた試合があった。

 

そんな秋山だから、おそらく諏訪魔を筆頭とする現場との摩擦があったことは想像に難くない。

 

芦野祥太郎率いるEnfants Terriblesの参戦で、リング上はますます活気付いているし、若手をのびのびと戦わせたいとする力が働いたのだろう。

 

よりエンターテインメイント性を高めていきたい現・全日本プロレス社長と意見の相違があったことゆえの結果というのが表向きの理由であろうが、実際には現場との軋轢からのDDTへの「出向(サラリーマン社会で言うところの)」というのは、業界内だけでなくファンも大半が気付いている。

 

「もはや、これは全日本ではない」という意見も出るとは思うが、個人的には、一番苦しい時期を乗り越えてきた諏訪魔がいる限り、この団体は全日本プロレスだと思うし、何より渕正信がいるのだから、外野がとやかく言うことでは無い。

 

 

そして、秋山の新天地がDDTだという点も実に興味深い。

 

新日本との壁を崩壊させ、時のIWGP王者・永田裕志との対戦を実現させたり、フリーで乗り込んできた鈴木みのるや高山善弘と逸早く合体したり、“保守本流” で在りながら常に“革新的” だった秋山。

 

歴史や規模を考えると、単なるインディー団体とは言い難いものの、成り立ちから言えば、DDTは間違いなく吹けば呼ぶようなインディーズだった。

 

それが、王道の象徴とも言える秋山を迎えてどういった化学反応を起こすのかが興味深いところだが、果たして「王道」は全日本プロレスの外に流出してしまうのか、それともDDTという別団体で継承されるのか。今回の一件はそれが問われることになる。

 

ゼロワン(もはや正式な表記が分からない)でも数名の離脱があるなど、ネガティブな話題が多い中、コロナ禍のプロレスを取り巻く環境がどうあろうとも、リングの上だけは常にホットであって欲しい。

 

そう願うばかりだ。

 





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